
-
J BOWL早稲田大学前店。近所のアサイーボウル2026年10月27日 14:51
アサイーボウルには、食べる側を妙に安心させる力がある。
どれだけ果物を盛ろうが、チョコをかけようが、オレオを刺そうが、器の底に紫色が見えていれば、
これは健康。
で押し切れる。
そんなアサイー界の免罪符をかなり自由に使っている店が、早稲田にある。
J BOWL 早稲田大学前店。
2026年2月12日オープン。
早稲田大学の目の前にあるアサイー専門店だ。
届いた容器を見ると、フタには青いマジックで「THANK YOU」と星マーク。
料理を見る前から手書きの熱量が強い。
今回食べたのは4種類。
まず、いちごの恋するアサイーBOWL。
名前からして、こちらの恋愛状況には一切配慮してこない。
フタを開ければ、外周をいちごが囲み、その内側にブルーベリー、中央にはマンゴー。
恋というより、フルーツ界の結婚披露宴である。
いちごとブルーベリーの甘酸っぱさに、マンゴーの濃い甘み。
そこを冷たいアサイーが受け止めることで、果物を大量に盛っただけの散らかった味にならない。
見た目は完全に映え担当なのに、ちゃんと食べても強い。
続いてキウイ&パイナポーBOWL。
ネーミングが急に陽気になった。
キウイ、パイナップル、バナナにチアシード、そして中央にはロータスクッキー。
南国の果物に、突然ベルギーから一名参加している。
キウイとパイナップルの酸味が前に出るので、4杯の中ではかなり爽やか。
そこへバナナのまろやかな甘さ、ロータスの香ばしさとザクッとした食感。
酸味、甘味、食感の担当部署がきちんと分かれているので、口の中の会議が揉めない。
そしてバナナブリュレBOWL。
ここから健康食の様子がおかしくなる。
表面を香ばしく焦がしたバナナに、いちご、パイナップル、ヌテラ、ミックスナッツ。
アサイーを食べに来たはずなのに、バナナが焼かれ、チョコまで投入された。
健康と背徳が同じテーブルで会食を始めている。
ブリュレしたバナナは甘さだけでなく焦げ目の香ばしさが加わり、そこへヌテラの濃厚さ。
かなりデザート寄りなのだが、いちごとパイナップルの酸味、ナッツの食感があることで重たさを逃がしている。
もはやアサイーボウルというより、
アサイーにデザートの英才教育を施した食べ物である。
最後はチョコミントBOWL。
フタを開けた瞬間、色が強い。
鮮やかなミントグリーンの削りチョコにチョコソース、オレオ、その周囲にはバナナといちご。
さっきまで南国にいたのに、最後だけ急に遊園地が建った。
ただ、これが意外と面白い。
チョコの濃い甘さにミントの清涼感。
そこへいちごの酸味とバナナのまろやかさ、さらにアサイーの果実感が入る。
普通なら同じグループLINEにすら入らなそうなメンバーなのに、食べるとちゃんと会話している。
オレオを砕けばザクザクした食感まで加わって、4杯の中で一番スイーツ感が強い。
チョコミント嫌いには国境。
チョコミン党には楽園。
J BOWLは、アサイーをただヘルシーに食べさせる店ではない。
いちごとベリーで王道をやったと思えば、次は南国へ行き、バナナを焦がし、ヌテラを投入し、最後にはチョコミントまで持ってくる。
映えだけでもない。
健康だけでもない。
食感も、酸味も、甘さも変えながら、一杯ごとにちゃんと別の楽しさを作っている。
4杯食べ終えて思った。
身体にいいものを食べた気はする。
ただ途中から、
身体にいいのか。
ただ楽しいだけなのか。
もう誰も確認していなかった。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#JBOWL
#早稲田
-
日本1のハンバーガーは予約2年待ち。赤坂見附Atami2026年10月26日 15:12
ハンバーガーはファストフードだ。
少なくとも、食べるために2年も待つ料理ではない。
ところが赤坂には、予約2年待ちとも言われるハンバーガー屋がある。
2年後の昼食を今から決める。
俺は来週の予定さえ怪しいのに、2年後の俺の胃袋は確実にハンバーガーを欲しているという前提だ。
ずいぶん強引な約束である。
赤坂見附駅から徒歩約1分。
2023年12月25日オープンの「atami」。
2026年10月、食べログ全国ハンバーガーランキング1位。
カウンター8席だけの完全予約制で、ランチは7,800円のコース。
控えめな入口を抜けると、目の前には薪火の調理場。
分厚い生のパティがずらりと並んでいる。
ハンバーガー屋というより、肉の焼ける一部始終を見届ける場所だ。
最初は南瓜のスープ、パセリオイル。
なめらかな南瓜の甘みを、パセリの青い香りが引き締める。
上品なのに物足りなさはなく、一皿目から仕事が丁寧だ。
続くのは酢〆鰯のブルスケッタ。
香ばしいパンに鰯を重ね、細かな薬味を散らした一品。
脂の乗った鰯を酢の酸味が引き締め、パンの香ばしさとよく合う。
ただ、ハンバーガー屋に来て鰯を食べるとは思わなかった。
予約2年待ちの店で、最初に待っていたのが鰯。
俺は何を予約したんだ。
次は熟成フライドポテト。
細長いポテトを想像していたら、衣をまとった大きな二切れが登場。
一瞬、天ぷらかと思った。
外はザクッと、中はほくほく。
噛むほどにじゃがいもの甘みが広がり、芋そのものが主役になっている。
客を待たせるだけじゃない。
じゃがいもまで熟成させている。
この店は時間の使い方がおかしい。
梨とライチのグラニテで口直し。
梨の瑞々しい甘さに、ライチの華やかな香り。
細かな氷が口の中をさっぱり整えてくれる。
そして、いよいよ薪焼ハンバーガー。
黒毛和牛100%、つなぎを使わない厚いパティ。
薪で焼いたバンズに、鮮やかな黄身の目玉焼き。
かぶりつくと、薪の香ばしさに続いて牛肉の濃い旨味が広がる。
卵とソースのコクが加わっても、肉の存在感はまったく薄れない。
肉を豪快に食べさせながら、味のバランスは驚くほど繊細。
高い材料を重ねただけでは、この一体感にはならない。
もう一つは季節限定、黒舞茸の薪焼ハンバーガー。
肉の上に舞茸が山盛り。
さらにクリーム状のソースがたっぷり。
牛肉が完全に舞茸の下敷きになっている。
ところが食べると、キノコの香ばしさと旨味が肉の味をさらに引き立てる。
通常版とは別の方向で美味しい。
どちらを選ぶべきか。
2年も待った人間に、今度はそんな難問を出さないでほしい。
締めはアールグレイとトンカ豆のアイスクリーム。
オレンジ色の皿に、削り節のようなものが山盛り。
一瞬、鰹節かと思った。
途中で鰯まで出てきた店だ。
アイスに魚が乗っていても、もう驚かない。
正体は削ったトンカ豆。
甘く芳しい香りが広がり、薪と牛肉の余韻をきれいに締めてくれる。
7,800円のハンバーガーと聞けば高い。
でも食べ終わると、これはハンバーガーを主役に据えた料理のコースなのだと分かる。
前菜にもポテトにも、それぞれ意味がある。
何より主役の肉が、ちゃんと期待を超えてきた。
それでも予約2年待ちは長すぎる。
そう思っていたはずなのに、食べ終わった俺は次の予約を考えている。
来週の予定すら決まっていないのに。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#atami
#赤坂
#百名店
-
三陸直送の牡蠣が1個100円。池袋かきのおきて2026年10月25日 13:39
生牡蠣が1個110円と聞いて、俺はまず20個食べた場合の金額を計算した。
2,200円。
まだ1個も食べていないのに、もう20個食べるつもりでいる。
安いものを見つけた時の俺は、判断がかなり雑になる。
ただし、牡蠣は安ければいいというものでもない。
110円で身まで110円相当だったら、それはそれで困る。
向かったのは、池袋駅東口から徒歩5分の「かきのおきて 池袋店」。
2025年11月28日オープン。
三陸産の生牡蠣を卸業者から直接仕入れ、1個110円で提供している牡蠣酒場だ。
今回はアラカルト。
お通しを含めて11品を食べた。
まずはお通しの肉寿司。
甘辛いタレをまとった牛肉がシャリを覆い、肉の脂と酢飯の酸味が重なる。
お通しからちゃんと美味しいと、この後の料理にも期待が高まる。
そして殻付き生牡蠣。
殻に収まった身はふっくらしていて、少なくとも値段に合わせて小さくなった様子はない。
口に運ぶと、なめらかな舌触りのあとに潮の香りとミルキーな旨味が広がる。
後味には牡蠣らしい濃さがきちんと残る。
これが110円。
20個という最初の計算が、急に現実味を帯びてくる。
続く焼き牡蠣3種は、レモン、ベーコンチーズ、青唐辛子味噌。
火が入った身は生とは違う弾力があり、レモンは酸味で輪郭を、ベーコンチーズは塩気とコクを、青唐辛子味噌は辛味と味噌の風味を重ねる。
同じ牡蠣でも、食べ比べると印象がはっきり違う。
カキフライは大ぶりな3個に、ピンク色の紅タル付き。
衣のサクッとした歯触りから、柔らかな牡蠣の旨味へ。
タルタルの酸味が油の重さを和らげてくれる。
生、焼き、揚げ。
ここまでは予定通り、牡蠣を食べに来た人間の注文である。
ここから少し怪しくなる。
長芋はちみつ梅キムチは、シャキッとした長芋に梅の甘酸っぱさとキムチの辛味。
濃い料理の合間に食べると、口の中がすっと切り替わる。
青唐辛子入りの有限ピーマンは、細切りピーマンのほろ苦さに塩昆布の旨味。
後から青唐辛子の辛味が来る。
派手さはないが、ついつい箸が伸びる。
餃子の皮タコスは、小さな皮にひき肉、トマト、チーズがたっぷり。
パリッとした皮に肉の旨味とトマトの酸味、チーズのコクが合わさり、軽いつまみとしてよくできている。
おでん大根の唐揚げは、運ばれてきた瞬間、まずかつお節が目に入る。
大根を探すと、その下にちゃんといた。
出汁を含んだ大根の柔らかさと、香ばしく揚がった衣の対比がいい。
からしを添えると、おでんの名残がちゃんと戻ってくる。
かもわさびは、厚めに切られた鴨のピンク色の断面が印象的。
しっとりした肉の旨味をわさびが引き締め、牡蠣や揚げ物とは違う落ち着いた味わい。
かきそばは、牡蠣ときのこ、海苔、紅生姜を合わせた焼きそば風。
牡蠣ときのこの旨味がやや太めの麺に絡み、紅生姜の酸味が後味を引き締める。
麺でも牡蠣の存在感がちゃんとある。
最後は細巻きとろたく乗せ。
細巻きの上にねぎとろと黄色いたくあんがたっぷり。
ねぎとろとたくあんが立派すぎて、肝心の細巻きを探してしまう。
ねぎとろの脂の甘みに、たくあんの塩気とポリポリした食感。
見た目の勢いだけでなく、味の組み合わせもいい。
11品食べ終えて思ったのは、この店は110円の牡蠣だけで勝負していないということ。
生で素材を見せ、焼いて風味を変え、揚げて満足感を出す。
さらに牡蠣以外の料理も、頼みたくなるものが揃っている。
最初に計算した「牡蠣20個で2,200円」は、最後まで間違っていなかった。
間違っていたのは、それだけで済むと思っていた俺の方だ。
11品も頼んでおいて、今さら気づいた。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#かきのおきて池袋店
#池袋グルメ
-
使い勝手の良い焼肉。池袋牛若丸2026年10月23日 15:38
牛若丸は牛ではない。
源義経の幼名である。
五条大橋で弁慶と戦った少年が、800年以上の時を経て、池袋では牛タンやカルビを提供している。
歴史の教科書には載っていなかった、その後の牛若丸だ。
池袋駅東口から徒歩1分。
ブロンズビル3階にある「牛若丸 池袋本店」。
肉問屋直営の焼肉店で、店内には周囲を気にせず食事ができる個室も用意されている。
今回は1日5組限定、2時間飲み放題付き6,000円のスペシャルコース。
まずは前菜三種。
白菜キムチ、カクテキ、きゅうりの漬物。
白菜の酸味と辛味、カクテキの歯応え、きゅうりのさっぱりした味わい。
続くチョレギサラダは、レタスやトマト、白髪ねぎに刻み海苔がたっぷり。
焼肉屋に入って二皿食べたのに、まだ肉を一枚も焼いていない。
この時点で一番暇そうなのが焼き網だった。
そしてようやく牛タン塩。
黒い皿に薄切りのタンが並び、中央には紫色の蘭の花。
焼肉屋で花を鑑賞することになるとは思わなかった。
しかも、なかなか立派な花だ。
肉の盛り合わせなのに、一瞬どちらが主役なのか分からなくなる。
タンはさっと焼いて、歯切れのよさと程よい弾力を楽しむ。
続く和牛カルビは、赤身に細かく脂が差し込んだ見た目。
焼けば脂が溶け出し、香ばしさとともに甘みが広がる。
牛ハラミはタレをまとった厚みのあるカット。
カルビの脂の甘みとは違い、こちらは噛むほどに感じる肉の旨味と歯応えが持ち味だ。
タン、カルビ、ハラミ。
全部まとめて牛肉と呼んでいるが、ここまで性格が違うと同じ動物なのか疑いたくなる。
そこへ韓国サムギョプサル。
包みレタスと一緒に登場したのは、しっかり厚みのある豚バラ肉。
牛若丸という店名なのに、突然豚が堂々と登場する。
義経も、まさか自分の名前で豚バラを焼かれるとは思わなかっただろう。
表面を香ばしく焼いてレタスで包めば、豚肉の脂の甘みを野菜の瑞々しさが和らげる。
牛肉とはまた違った食べ方を楽しめる。
続いて牛ホルモン。
白い脂をまとったホルモンには味噌だれ。
焼くことで味噌の香ばしさが立ち、脂のコクと独特の弾力が楽しめる。
それにしても焼肉は意外と忙しい。
タンは焼きすぎたくない。
カルビは脂が落ちる。
豚バラとホルモンはしっかり火を通したい。
食事をしているはずなのに、トングを握った右手だけがずっと働いている。
しかも皿が変わるたびに仕事内容も変わる。
焼肉屋の客は、思っていたより労働者だった。
そして〆は石焼きビビンバ。
熱々の石鍋にナムル、キムチ、海苔、卵黄。
具材をご飯と混ぜ合わせ、鍋肌に押し付けて香ばしいおこげを作る。
卵黄が絡んだまろやかさに、キムチの酸味とナムルの食感。肉が続いた後にはちょうどいい味の変化だ。
ようやく肉を焼く仕事が終わったと思ったら、今度は米を混ぜる仕事が始まった。
どうやら最後まで休憩はないらしい。
デザートはアイスにホイップクリームとカラフルなトッピング。
さっきまで肉の焼き加減を真剣に考えていた人間が、最後は随分と可愛らしいものを食べている。
温かい肉料理が続いた後の冷たい甘さで、全9品が終了。
タンの歯応え、カルビの脂、ハラミの肉感、豚バラの厚み、味噌だれのホルモン。
それぞれ違った特徴の肉を味わい、石焼きビビンバとデザートまで楽しむ。
高級感や特別感を追い求めるというより、気の置けない仲間と肩肘張らずに焼肉を囲む。そんな時間に合う店だと思う。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#牛若丸
#池袋
-
こだわりの炉端焼きと注文受けてからたくご飯。恵比寿燗アガリ宵2026年10月23日 15:34
野菜をたくさん食べた夜は、なぜか自分を許してしまう。
アスパラ、椎茸、茄子、マコモダケ、蓮根。
これだけ食べれば、相当健康的な食生活だと思う。
ただ、その合間に銀鱈と鰻を食べ、南部鉄器で米まで炊いてもらっている。
野菜にアリバイを作らせているだけだった。
恵比寿駅から徒歩3分。
2026年6月23日オープンの「燗アガリ 宵」。
新宿の人気店「燗アガリ」の姉妹店で、旬の魚や野菜を炭火で焼き、日本酒は温度にまでこだわる炉端焼きの店だ。
炉端から漂う炭火の香ばしさが、食欲を容赦なく刺激する。
今回はアラカルト。
気づけば12品も注文していた。
まず、お通しから様子がおかしい。
鮪赤身、カンパチ、コウイカの刺身三種。
赤身の濃い旨味、カンパチの脂、コウイカのねっとりした甘み。それぞれの持ち味を塩や酢橘でも楽しめる。
お通しとは、注文していないものが勝手に出てくる制度だと思っていた。
ところが、これはもう一皿注文したい。
制度の趣旨を超えている。
生クラゲと酢橘ポン酢は、コリコリした独特の歯応えを爽やかな酸味が引き締める。
海ではなるべく遭遇したくない相手を、店では自分から箸で追いかけている。
人間とは実に勝手な生き物だ。
アスパラガスの炭火焼きは、穂先の香ばしさと茎の瑞々しさがいい。
塩だけで素材の甘みを引き出す潔さ。こういう単純な料理ほど火入れの技術が問われると思う。
舞茸の天ぷらにはカラスミ。
軽やかな衣の中から舞茸の香りが広がり、カラスミの塩気と旨味が重なる。
普段は鍋の脇役になることも多い舞茸が、今日は随分といい待遇を受けている。
大分県産椎茸には、ペコリーノロマーノをたっぷり。
肉厚な傘から溢れる旨味に、羊乳チーズ特有の塩気とコク。
和の焼き椎茸にイタリアのチーズ。意外な組み合わせだが、互いの旨味が見事に噛み合う。
国際交流がうまくいきすぎている。
熊本県産赤茄子の炭火焼きは、鰹節と生姜を添えて。
鰹節に埋もれた茄子は、香ばしい皮目の内側がとろりと柔らかい。
炭火が引き出した甘みを、鰹節の旨味と生姜の清涼感が支えている。
そして銀鱈西京焼き。
食欲をそそる焼き色の下には、脂の乗った柔らかな身。西京味噌の甘みと香ばしさが重なる。
これを食べて白飯が欲しくならない日本人とは、一度じっくり話をしてみたい。
そこで南部鉄器で炊き上げる、群馬県みなかみ産・本多義光氏の「ひとめぼれ」。
炊き上がりまで40~50分。
こっちは今すぐ食べたいのに、米だけはまったく焦っていない。
しかし、艶やかに炊き上がった一粒を頬張れば、その待ち時間にも納得する。
ふっくらした粒立ちと米の甘み。
そこへ銀鱈の脂と西京味噌の旨味。
日本人に生まれてよかった。
秋鮭のきのこおろし焼きには、いくらがたっぷり。
香ばしく焼かれた秋鮭に、きのこの旨味とおろしのさっぱり感。いくらの塩気が全体を引き締める。
鮭の親子が揃って登場したというのに、俺は両方食べることしか考えていない。
続いてマコモダケの炭火焼き。
実はこいつ、キノコでも竹でもなくイネ科の植物。
名前からして情報が混乱している。
しかし、焼き目の香ばしさとシャキッとした歯応え、ほのかな甘みは実に明快。
茨城県産「れんこん三兄弟」の蓮根七味醤油焼き。
三兄弟とは、実際に三人の兄弟が中心となって営む生産者の名前だ。
香ばしい醤油と七味の辛さが蓮根の甘みを引き立て、噛むほどに旨い。
しかも皿の上には蓮根が三切れ。
どれが長男なのかは最後まで分からなかった。
最後は鰻と長芋の磯辺焼き。
厚切りの長芋に艶やかな鰻。添えられた海苔で巻いていただく。
鰻の濃厚な脂と甘辛いタレを、長芋の食感と海苔の香りが受け止める。
これだけで完成された一品なのに、また白飯が欲しくなる。
どうやら俺の食欲には、閉店時間という概念がない。
振り返れば、炭火の香ばしさをまといながら、野菜は瑞々しく、魚は脂の旨味をしっかり楽しめた12品。
特に椎茸と銀鱈、炊きたてご飯が印象に残った。
そして何より、野菜をたくさん食べた夜だった。
次の健康診断で「野菜はよく食べていますか」と聞かれたら、胸を張って「はい」と答えようと思う。
嘘は一つもついていない。
食べ方については、聞かれない限り黙っておく。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#燗アガリ宵
#恵比寿
-
ドコカホットスルタイノオフクロノアジ。イケブクロタイイナカリョウリクンヤー2026年10月22日 17:06
池袋で父方のおばあちゃんに会ってきた。
もちろん俺の祖母ではない。
そもそも、タイに親戚はいない。
池袋駅C6出口から徒歩2分。
2008年2月オープンのタイ田舎料理 クンヤー。
クンヤーとは、タイ語で父方の祖母という意味らしい。
母方ではダメなのか気になるが、初対面で家庭の事情に踏み込むのも失礼なので、とりあえず食事をすることにした。
雑居ビルの2階にある、タイ東北部イサーン地方の郷土料理を中心に提供する店。
タイ料理の本格派というと、とにかく辛ければいいと思われがちだが、俺は少し違うと思っている。
酸味、甘み、塩気、香草の使い方。そういう部分にこそ現地の食文化が表れる。
今日はそのあたりも楽しみたい。
まずはシンハービールで乾杯。
連れのメロンソーダと並べると、こちらは晩酌、あちらは親戚の子供会である。
最初はソムタムタイ。
青パパイヤのサラダだ。
パパイヤといえば甘い果物のはずなのに、熟す前に千切りにされ、干し海老とピーナッツを背負って登場する。
進路変更が急すぎる。
青パパイヤの小気味よい歯応えに、酸味と塩気、干し海老の旨味。ピーナッツの香ばしさが加わり、一口の中でいくつもの味が重なる。
見た目はサラダでも、箸休めに収まる気はないらしい。
続いてパックブンファイデーン。
空芯菜の炒め物。
ニンニクと唐辛子を利かせた炒め汁をまといながら、茎のシャキッとした歯応えが残る。
空芯菜は茎の中が空洞になっている野菜だが、味まで空っぽというわけではない。
むしろ調味料を受け止める力が強く、妙に白飯が欲しくなる。
野菜を食べて健康になるつもりが、炭水化物の勧誘を受けている。
続いてトードカティアム。
今回はイカを選択。
イカの弾力と旨味に、ニンニクの香ばしさを重ねた一皿。
イカは素材の味が繊細なだけに、ニンニクとの組み合わせはバランスが大切になる。
そしてクラドゥックムートード。
スペアリブのニンニク揚げ。
こんがり色づいた骨付き肉に、パクチー、ピーナッツ、千切り野菜が添えられている。
骨の周りの肉をかじる楽しさは、こういう料理ならでは。香味野菜を合わせることで、揚げ物に変化をつける構成もいい。
それにしても、ニンニク炒めの次にニンニク揚げ。
料理の系統は違うのに、翌日の口臭については一致団結している。
明日会う人には先に謝っておきたい。
そしてガパオラードカオ・ガイ。
鶏肉のバジル炒めをご飯に添え、上には目玉焼き。
肉の旨味にバジルの香りが重なり、半熟の黄身を崩せば全体がまろやかにまとまる。
その横で唐辛子だけが、最後まで協調性を見せない。
卵がいるから平和だと思ったら大間違いだ。
そして、この日の主役。
プーニムパッポンカリー、2,500円。
皿いっぱいに広がるオレンジ色のカレー卵ソース。赤いパプリカと緑の香草が彩りを添え、その中にソフトシェルクラブが埋まっている。
もはや発掘調査である。
ソフトシェルクラブは、脱皮直後の柔らかい蟹なので殻ごと食べられる。
普通の蟹なら、ここから無言で殻をほじくる時間が始まるが、その工程がない。
蟹を食べている最中に急に会話が止まる問題を、タイのおばあちゃんが解決してくれた。
そして肝心の味もいい。
スパイスの風味に卵のまろやかさが重なり、蟹の旨味を包み込む。濃厚なソースが具材によく絡み、食べ進めるほど白飯が欲しくなる。
単に辛さで押し切るのではなく、スパイスと卵のコクで食べさせる料理。
今回食べた中では、これが一番気に入った。
ソムタムの酸味、空芯菜の香ばしさ、ガパオのバジル、そして蟹のカレー。
同じタイ料理でも、それぞれ味の組み立て方が違う。
華やかな見た目や辛さだけでなく、素材と調味料の組み合わせで楽しませてくれるところがいい。
それにしても、父方のおばあちゃんの料理をこれだけ食べたのだから、そろそろ孫を名乗ってもいい気がする。
ただ、最後に会計を済ませて気づいた。
普通、おばあちゃんの家に行けば、お菓子のひとつでも持たせてくれる。
ここでは俺がお金を払っていた。
どうやら、孫割はまだ適用されないらしい。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#タイ田舎料理クンヤー
#池袋
-
韓国で流行りのカスタムフローズンヨーグルト。yoajung 新大久保店2026年10月21日 11:50
映えるスイーツは、見た目がピーク。
正直、そんな先入観があった。
写真を撮るまでは楽しい。
ただ、実際に食べると甘さが重く、途中で飽きる。
だからアイスに求めるのは、豪華なトッピングよりも最後まで食べ切れるキレだと思っている。
向かったのは、新大久保駅から徒歩2分ほどのYOAJUNG 新大久保1号店。
韓国発のフローズンヨーグルトブランドで、店名にはヨーグルトアイスクリームの定石という意味が込められている。
ヨーグルトアイスをベースに、フルーツやシリアル、チョコ、ソースなどを自由に組み合わせるスタイル。
新大久保1号店は2025年12月24日にオープン。
青と白を基調にした明るい店内に入り、オーダーシートを手に注文を組み立てていく。
今回はレインボーグレープフルーツコンボにキャラメルソースを追加。
白いヨーグルトアイスの横には、大きくカットされたキウイとグレープフルーツ。
そこにカラフルなリング状のフルーツシリアルが散り、キャラメルソースがとろりとかかる。
見た目だけなら、かなり甘そうだ。
だが、一口食べると印象が変わる。
キャラメルの濃厚な甘さを、ヨーグルトアイスの爽やかな酸味がすぐに切ってくれる。
そこへピンクグレープフルーツの瑞々しい苦酸味と、キウイの甘酸っぱさ。
さらにフルーツシリアルのザクッとした食感が入ることで、冷たく滑らかなヨーグルトアイスの中にしっかりリズムが生まれる。
特に面白かったのがキャラメルソース。
フルーツだけなら爽やかさに振り切る組み合わせだが、キャラメルの甘さとコクを足すことで、きちんとデザートを食べた満足感まで持たせてくれる。
それでも重くならないのは、最後までヨーグルトの酸味が芯に残っているから。
甘い。
酸っぱい。
瑞々しい。
ザクッとする。
それぞれ方向の違う要素をかなり重ねているのに、どれか一つが強く出過ぎない。
YOAJUNGの面白さは、映えるトッピングを好きなだけ盛れることではなく、ベースのヨーグルトアイスを中心に自分好みのバランスを作れるところにあるのだと思う。
単なる流行り物だと思っていた。
でも、見た目の派手さより印象に残ったのは、食べ終わった後の軽さ。
レインボーグレープフルーツコンボにキャラメルソース。
爽やかさだけでは少し物足りない。
かといって、甘ったるいアイスも違う。
そんな俺には、かなりちょうどいい組み合わせだった。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#Yoajung新大久保店
#Yoajung
#新大久保
-
練馬のラーメン百名店。甘味と旨味のハーモニー。濃菜麺井の庄2026年10月21日 00:31
濃厚豚骨や激辛ラーメンと聞くと、どうしても力で押し切る一杯を想像しがちだ。
豚骨を濃くする。
唐辛子を増やす。
具材を山のように盛る。
それだけでもインパクトは作れる。
でも、本当に難しいのはその先だ。
濃厚なのに重さだけで終わらない。
辛いのに刺激だけが残らない。
野菜が多いのに、単なる箸休めにもならない。
濃厚さと野菜。
重さと甘さ。
そして辛さ。
普通ならぶつかりそうな要素を、一杯の中でどう成立させるか。
その答えを練馬で長く作り続けているのが、濃菜麺 井の庄。
2009年7月17日オープン。
石神井公園の麺処 井の庄から生まれた2号店で、店が掲げるテーマは濃菜麺を練馬のソウルフードに。
熟成した豚骨の旨味に野菜の旨味を重ね、他にはない一杯を作る。
練馬駅西口から徒歩1分という場所で営業を続け、ラーメンの流行が何度変わっても、この味を求める人が並び続けている。
今回は博多そばと辛辛濃菜麺。
同じ豚骨を軸にしながら、全く違う方向へ振り切った二杯を食べた。
まずは博多そば。
乳白色のスープに細いストレート麺。
中央にはたっぷりの青ネギとキクラゲ。
海苔とチャーシューが脇を固める。
見た目だけなら王道の博多豚骨に近い。
ただし、中身は井の庄そのもの。
この一杯に使われるのは、博多そば専用に炊いた別のスープではない。
看板である濃菜麺の濃厚な豚骨スープを、そのまま細麺で楽しませる。
ここが面白い。
レンゲを入れると、スープにはしっかりとした濃度がある。
豚骨特有の香りを強烈に前へ押し出すのではなく、もっと丸く、滑らか。
それでいて味は決して軽くない。
豚骨の旨味が厚く、その濃度をそのまま麺へまとわせて食べる感覚だ。
そこへ合わせるのが細麺。
濃厚なスープに太麺で対抗するのではなく、細い麺の表面いっぱいにスープを絡ませて啜る。
だから一口ごとに入ってくる豚骨の割合が高い。
博多そばという名前なのに、食べているのは間違いなく井の庄の豚骨。
そのギャップがいい。
ネギの清涼感とキクラゲのコリッとした食感も、この濃度の中では重要になる。
どちらも単なる具材ではなく、重たいスープの中に小さな切り替えを作ってくれる。
シンプルな構成だからこそ、スープそのものの完成度がそのまま出る一杯だ。
そして辛辛濃菜麺。
こちらは着丼した瞬間から景色が変わる。
濃厚な豚骨スープ。
その上にはたっぷりの野菜。
さらに表面を覆う赤黒い辛味。
大ぶりなチャーシューと味玉まで加わり、見るからに重量級。
ただ辛いラーメンなら、唐辛子を増やせば作れる。
この一杯の凄さは、辛味をここまで重ねても、土台の濃菜麺が消えないことにある。
一口目から辛さはしっかり来る。
その直後に濃厚な豚骨のコク。
さらに野菜の甘みが入り、辛さ一辺倒になりそうな舌を引き戻してくる。
しかも、この辛味には意外な仕掛けがある。
隠し味はピーナッツバター。
唐辛子だけで辛さを一直線に伸ばすのではなく、その奥へ甘みとコクを忍ばせる。
だから辛い。
でも、辛さだけで終わらない。
豚骨の厚み。
野菜の甘み。
刺激。
そしてピーナッツバター由来の丸み。
それぞれが別方向から押してくるのに、口の中では最後に一つの味へまとまる。
野菜も、濃厚なラーメンを少し健康的に見せるための飾りではない。
豚骨だけを食べ続ければ、後半はどうしても重くなる。
そこへ野菜の水分、甘み、食感が入り続けることで、スープの濃さを落とさずに口の中だけを切り替えてくれる。
濃菜麺という名前の菜には、ちゃんと意味がある。
豚骨と野菜。
どちらかを主役にするのではなく、両方があるから最後まで成立する。
そして博多そばの細麺とは対照的に、こちらは存在感のある麺で受け止める。
濃厚な豚骨。
大量の野菜。
強い辛味。
これだけを一度に抱えても麺が負けない。
最初から全部を混ぜ切るより、辛味の濃い場所、豚骨の強い場所、野菜と一緒に食べる場所で、一口ずつ表情を変えながら進めたくなる。
この二杯を並べて食べると、井の庄の面白さがよく分かる。
博多そばは削る。
野菜を外し、細麺を合わせることで、豚骨そのものを前へ出す。
辛辛濃菜麺は重ねる。
野菜、辛味、甘み、濃厚な豚骨を積み上げながら、それでも一杯として破綻させない。
片方は引き算。
片方は足し算。
同じ豚骨を使っているのに、見せ方は正反対だ。
井の庄という名前を聞くと、どうしても辛辛魚の強烈なイメージが先に浮かぶ。
でも練馬の濃菜麺 井の庄が長く支持されている理由は、単に濃い、辛い、量が多いという分かりやすい刺激ではないと思う。
豚骨をどう食べさせるか。
野菜をどう旨味として使うか。
辛さをどこまで上げても、どうすれば味を残せるか。
その組み立てが細かい。
だから、食べた瞬間のインパクトだけで終わらない。
濃厚なのにまたレンゲを入れたくなる。
辛いのにもう一口進みたくなる。
そして気づけば、重さも辛さも含めて全部がこの一杯の魅力になっている。
濃菜麺を練馬のソウルフードに。
店が掲げたその言葉は、17年近く続いてきた今では、単なる目標ではない。
博多そばと辛辛濃菜麺。
真逆の二杯を食べれば、井の庄が豚骨という一つの土台から、どれだけ違う旨さを作れる店なのかがよく分かる。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#濃菜麺井の庄
#練馬
#ラーメン百名店
-
五反田で気軽にパエリアとワイン。五反田漁師バル2026年10月19日 15:42
漁師の仕事は、海から魚を獲ってくることだ。
少なくとも俺は、そう教わって生きてきた。
ところが五反田には、牛まで獲ってくる漁師がいる。
一体どこに網を投げているのか。
五反田駅から徒歩30秒。
2015年3月24日オープンの「五反田漁師バル」。
新鮮な魚介を使った料理と、生米から炊き上げるパエリアが看板のスペインバル。
漁師を名乗る以上、魚には相当な自信があるのだろう。
とりあえず、その腕前を見せてもらうことにした。
まずはお通しのポテトサラダ。
クラッカーの上に、丸く盛られたポテサラがちょこんと乗っている。
漁師の店に来たのに、最初の一皿がずいぶん可愛らしい。
クラッカーの軽い歯触りに、ポテサラのまろやかなコク。
まだ出航したばかりだから、船も小さいらしい。
続いてカルパッチョ。
ここで急に漁が本格化する。
皿いっぱいに広がる赤身と白身の魚。さらに海老やタコまで加わり、色彩も食感も賑やかだ。
魚のしっとりした舌触り、タコの弾力、海老の甘み。それぞれの持ち味を一度に楽しめる。
繊細に一種類ずつ味わわせるというより、魚介の魅力をまとめてぶつけてくる豪快な一皿。
先ほどのポテサラとの落差がすごい。
あれは出航前の挨拶だったらしい。
続いて一口ピザ。
一口と聞いていたのに、運ばれてきたのは魚介をたっぷり乗せたピザが二切れ。
俺の口をどれだけ大きいと思っているのか。
海老や貝類が生地を覆い、トマトソースの旨味にチーズのコクが重なる。
魚介の存在感を生かしながら、ピザとしての満足感もきちんとある。
一口という名前だけが、最後まで謙虚だった。
そして牛ハラミステーキ。
ここで突然、陸上生物が登場する。
マグロでもカツオでもない。
牛である。
鉄板には厚めに切られたハラミが並び、断面には食欲をそそる赤み。玉ねぎを敷き、ソースと香草で仕上げている。
赤身肉らしい力強い旨味と食べ応えは、魚介中心の食事にいい変化を与えてくれる。
しかし、ここは漁師バル。
牛を仕入れること自体に文句はないが、漁師としての業務範囲が気になる。
船に牛を積んで帰ってきたのだろうか。
そして今回、最も気に入ったのが海老パエリア。
運ばれてきた瞬間、思わず目を奪われた。
大ぶりの海老にムール貝、アサリ。赤や黄色のパプリカが彩りを添え、中央にはレモン。
海老パエリアという名前なのに、ほかの魚介も随分と積極的に参加している。
もはや海鮮の合同説明会である。
この店のパエリアは、生米から炊き上げる本格派。
海老の濃厚な出汁を米に吸わせ、魚介の旨味を閉じ込める。
そして、ここが実にいい。
主役は豪快に盛られた海老だけではない。
むしろ、その旨味を受け止めた米そのものが旨い。
甲殻類の濃厚な風味に貝の旨味が重なり、米を噛むほど味わいが広がる。
具材の豪華さだけで押し切らず、米までしっかり美味しく仕上げているところに、この料理の完成度を感じる。
海老が派手に客を呼び込み、最後に評価をさらっていくのは米。
なかなか厳しい業界である。
この日の一番は間違いなくこれだった。
最後は海鮮具だくさんアヒージョ。
普通、アヒージョといえばオイルの中に魚介が浸かっている料理だ。
ところがこちらは、サーモンや海老、トマト、枝豆まで器いっぱいに詰め込まれている。
具だくさんというより、具がオイルの居場所を奪っている。
魚介の旨味が移ったオイルをバゲットに染み込ませれば、最後まで楽しめる。
こういう料理は、パンを追加したくなるから困る。
カルパッチョでは魚介そのものを楽しみ、ピザでは生地と合わせ、アヒージョではオイルに旨味を移す。
そしてパエリアでは、その旨味を米の一粒一粒にまで吸わせる。
同じ魚介でも、調理法によってここまで表情を変えられる。
特に海老パエリアは、見た目の豪華さだけでなく、米を主役にできているところが素晴らしかった。
五反田の漁師、なかなか腕がいい。
ただ、最後まで一つだけ納得できなかった。
あの牛ハラミは一体、どこの海で獲れたんだ。
今度来たら、漁場だけでも教えてもらいたい。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#五反田漁師バル
#五反田
-
水産卸直営のイタリアン。渋谷oasis2026年10月19日 15:40
魚は魚。肉は肉。
少なくとも俺は、そこをきちんと区別して生きてきた。
ところが渋谷には、生ハムを名乗る鯛がいるらしい。
魚類による経歴詐称を疑った。
向かったのは、渋谷駅直結、渋東シネタワー地下1階の「ハーブと魚介のイタリアン&カフェ 渋谷OASIS」。
2026年10月1日、港町のイタリアン モンテロッソからリニューアル。
水産卸直営の魚介と、自社農園のハーブを組み合わせるイタリアンだ。
店内には水槽まである。
魚を眺めながら魚を食べるという、魚にとっては非常に居心地の悪い空間である。
今回は全7品のコース。
まずはアンティパストミスト。
生ハムやサラミ、卵料理、野菜のマリネなどが並ぶ盛り合わせ。
肉の塩気、卵のまろやかさ、野菜の酸味。それぞれの個性がうまくまとまり、最初の一皿として申し分ない。
全員が好き勝手に自己紹介しているのに、なぜか会議が成立している。
続いてカルパッチョ。
薄く引かれた白身魚に、紫玉ねぎやハーブを添えた一皿。
白身の繊細な旨味に香味野菜の爽やかさが重なり、オイルが全体をまとめる。
魚の持ち味を余計な味付けで覆わず、香りで引き立てる構成がいい。
水産卸直営という看板にも納得できる。
続いてハウスサラダ。
赤と黄色のパプリカ、トマト、紫玉ねぎ。葉野菜の緑に鮮やかな色彩が重なる。
シャキッとした歯応えにドレッシングの酸味が加わり、口の中を軽やかに整えてくれる。
前菜、カルパッチョ、サラダ。
ここまで随分と健康的だ。
そろそろ俺の身体が、生活習慣を改めたと勘違いし始める頃である。
そこへトリュフ香るフレンチフライ。
やっと芋が来た。
しかも、トリュフの香りをまとっている。
表面は香ばしく、中はホクッとした仕上がり。塩気にトリュフの芳醇な香りが重なり、ついつい手が伸びる。
先ほどまでの健康的な流れを、一皿で完全に振り出しへ戻してきた。
しかも野菜を三皿食べた実績があるので、罪悪感はほとんどない。
人間の自己正当化というのは便利である。
続いて生ハムとルッコラのピザ。
こんがり焼かれた生地に、生ハムとルッコラ、削ったチーズがたっぷり。
生ハムの塩気とチーズのコクを、ルッコラのほろ苦さが引き締める。
この苦みがいい。
肉とチーズだけでは重くなりがちなところに、爽やかな抜け道を作っている。
生ハムもルッコラも、自分の役割をよく理解している。
そして今回、一番気に入ったのが本日のパスタ。
鯛の生ハムとバジルの自家製ジェノベーゼ。
ようやく例の鯛と対面した。
鮮やかな緑色のソースをまとった平打ちパスタに、薄く仕立てた鯛の生ハム。白髪ねぎや魚卵が彩りを添える。
しかも皿まで華やかな花柄。
料理も器も、まったく遠慮がない。
自家製の生パスタはもちもちとした食感で、バジルの香り豊かなソースがよく絡む。
そこへ鯛の凝縮された旨味と程よい塩気が加わり、味わいに奥行きが生まれる。
肉の生ハムとは違う、魚ならではの繊細さと軽やかさ。
濃厚なジェノベーゼでありながら、鯛の存在感が埋もれていないところが素晴らしい。
名前だけ奇抜な料理かと思っていたが、むしろ今回のコースで最も完成度を感じた。
ただの鯛が生ハムを名乗っているのではない。
これはきちんと修業して転職した鯛である。
最後はティラミス。
ココアパウダーをまとった四角い姿が、実に正統派。
マスカルポーネのコクと滑らかな口当たりに、コーヒーのほろ苦さが重なる。
ここまで魚が生ハムを名乗ったり、芋がトリュフをまとったりしてきたので、最後に普通のティラミスが出てくると少し安心する。
全体を通して印象的だったのは、魚介とハーブの使い方。
特にジェノベーゼは、鯛を単なるトッピングではなく、味の中心を担う食材として成立させていた。
あの一皿を食べるために、もう一度訪れる価値があると思う。
それにしても、生ハムを名乗る鯛とは随分大胆な発想だ。
最初は経歴詐称を疑ったが、ここまで仕事ができるなら文句はない。
むしろ、うちでも採用したいくらいだ。
ただ、履歴書の前職欄に「鯛」と書かれていたら、さすがに面接は長くなる。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#渋谷OASIS
#渋谷
-
コメント無し。錦糸町いせや2026年10月18日 15:53
料理の盛り付けにも、建築基準法が必要だと思う。
そう考えるようになったのは、錦糸町でマグロの違法増築を目撃したからだ。
錦糸町駅から徒歩1分。
本マグロと信玄どりを看板に掲げる居酒屋「いせや」。
今回はコースではなくアラカルト。
好きなものを好きなだけ注文する。
大人になって経済力を手に入れた人間に許された、ささやかな自由である。
まずはマグロ。
赤身に玉ねぎを重ね、ソースをかけた一皿。
皿の端にはマヨネーズ系の白いソースまで添えられている。
魚そのものの味を確かめようとしたが、薬味と味付けが思いのほか積極的だ。
マグロの話を聞きに来たのに、同席した玉ねぎがずっと喋っている。
続いてネギトロと韓国海苔。
ネギトロを海苔で包んで食べる。
海苔の香りが加わり、食べやすい組み合わせだ。
ただ、ここで気づいた。
またマグロだ。
しかし、注文したのは俺である。
誰にも文句は言えない。
途中、揚げ物を挟む。
さらに、あさりの酒蒸し。
ようやくマグロ以外の海産物と対面した。
あさりは余計な装飾もなく、蒸し汁に浸かっている。
全員がきちんと自分の殻に収まっている。
なんて協調性のある連中なんだ。
さっきまで食材同士の自己主張が激しかっただけに、貝の社会性が妙に頼もしい。
もっとも、あさりを注文したのも俺である。
ここまで全部自分で選んでいるのに、まるで店の献立に翻弄されているような感想を抱き始めていた。
そして、再びマグロ。
今度はネギトロの上にウニとイクラを乗せ、周囲を黄色い卵黄ダレで満たした一皿。
豪華だ。
とにかく豪華だ。
食材同士がまったく遠慮していない。
全員が主役を希望している。
マグロの旨味、ウニのコク、イクラの塩気、卵黄のまろやかさ。
それぞれの役割は理解できる。
ただ、これだけ重なると、一つひとつの個性よりも全体の濃厚さが前に出てくる。
口の中で全員が同時に喋り始めた。
議長はいないのか。
誰か一人ずつ発言してほしい。
素材同士が喧嘩しているわけではない。
ただ、誰も譲らない。
結果、俺の舌が議事録を取れなくなった。
続いて、赤いタレをまとったマグロの小鉢。
胡麻も振られ、今度は味付けで存在感を出してくる。
マグロ。
ネギトロ。
ウニとイクラを乗せたネギトロ。
またマグロ。
ここまで来ると、俺はいったい何を食べに来たのか分からなくなってきた。
いや、分かっている。
マグロだ。
自分で頼んでいる。
そして最後。
とんでもないものが運ばれてきた。
大皿いっぱいに敷き詰められたマグロ。
中央にはネギトロが積み上がり、ウニとイクラ、白髪ねぎやカイワレが飾られている。
ついに高層化した。
平屋から始まったマグロが、とうとうタワーマンションになった。
中央のネギトロが本棟。
イクラは高層階の分譲住宅。
ウニは最上階のペントハウス。
カイワレは屋上緑化。
白髪ねぎに至っては、もはや避雷針である。
建ぺい率を完全に無視している。
そもそも用途地域が海だ。
しかも、よく見れば敷地の外側までマグロが広がっている。
もはや食事というより都市開発だ。
どこから箸をつけるべきか、一瞬迷った。
食べる前に内見が必要な料理なんて初めてである。
確かに見た目の迫力はある。
ただ、マグロを大量に盛ることと、マグロの美味しさを最大限に引き出すことは別の話だ。
脂のある身にウニやイクラ、さらに薬味まで重なると、ひと口の情報量がどうしても多くなる。
個人的には、もう少し素材ごとの持ち味や味の強弱を楽しみたかった。
料理は足し算だけでなく、引き算も大切だと思っている。
そんなことを考えながら、この日の注文を振り返った。
マグロ。
ネギトロ。
ウニとイクラ。
またマグロ。
最後に大量のマグロ。
引き算を語っている人間の注文履歴とは思えない。
しかも帰ってから店の情報を調べていたら、さらに驚くべき事実が発覚した。
オープン日は2026年4月1日。
エイプリルフール。
なるほど。
妙に納得しかけたが、よく考えれば店は何も嘘をついていない。
好きなものを選び、好きなだけ注文し、出てきた料理を前に勝手に困惑していた。
すべて俺の意思だ。
店の盛り付けに建築基準法が必要だと思っていたが、本当に問題だったのは俺の注文設計かもしれない。
結局、この夜に一番欠けていたのは引き算だった。
店ではない。
俺の理性だ。
マグロの違法増築を告発するつもりだったのに、注文履歴を確認したら、建築主の欄に俺の名前があった.
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#いせや
#錦糸町
-
使い勝手の良い居酒屋。池袋くろちゃん2026年10月18日 15:45
居酒屋の注文履歴には、その人間の本性が出ると思っている。
何が好きで、何を我慢できて、どこで欲望に負けるのか。
池袋で10品注文した俺の履歴には、我慢した形跡が一切なかった。
池袋駅西口から徒歩2分。
2026年6月オープンの「煮込みとあて巻き くろちゃん 池袋店」。
何でもあるのに何でもうまい。
そんな強気な言葉を掲げる大衆酒場だ。
何でもあると言われると、こちらも何でも頼みたくなる。
店と客の間に、最初から危険な信頼関係が成立している。
今回はアラカルト。
まずは名物の白もつ煮込み。
もつ、豆腐、煮卵、野菜に山盛りのネギ。
器の中が満員電車である。
もつの弾力に煮汁を吸った豆腐、卵の食べ応え。コクのある煮汁が全体をまとめ、酒場らしい満足感がある。
ただ、店名は「くろちゃん」なのに看板料理は白。
名前くらいは統一してほしい。
続いておつまみネギトロ。
ネギトロにたくあん、ワサビ、海苔。
自分で巻いて食べるスタイルだ。
脂のあるネギトロに、たくあんの歯応えと海苔の香りが加わる。
組み合わせはいい。
ただ、酒を飲みに来たのに突然ちょっとした作業が発生する。
具材を乗せ、バランスを考え、こぼれないように巻く。
この店では、客にも最低限の労働が求められるらしい。
九条ネギと牛タンの塩ダレ炒めは、牛タンの歯応えと九条ネギの香りを塩ダレでまとめた一皿。
それにしてもネギの存在感がすごい。
牛タンを注文したはずなのに、京都から来た野菜が堂々と主導権を握っている。
東京に出てきて随分と態度が大きくなったものだ。
タコの青唐醤油がけは、厚切りのタコに青唐辛子とレモン。
タコの弾力、醤油の塩気、青唐辛子の刺激にレモンの酸味。
さっぱりした見た目に反して、なかなか攻撃的な組み合わせだ。
こういう料理は、辛さが得意な人間と苦手な人間で評価が分かれる。
青唐辛子には容赦がない。
相手の事情など一切考えてくれない。
続いて串揚げのれんこんとかぼちゃ。
れんこんは歯切れがよく、かぼちゃはほくっとした甘みがある。
衣の香ばしさと素材ごとの食感の違いが楽しい。
野菜を二種類注文した。
この事実は、後ほど健康を語る際に積極的に活用していきたい。
続いてカマンベールチーズの天ぷら。
三角形の衣の中には濃厚なチーズ。
香ばしい衣にチーズのコクと塩気が重なり、食べ応えがある。
それにしても、日本人は本当に何でも揚げる。
フランス人が長い年月をかけて育ててきたチーズ文化を、衣に包んで油へ投入する。
文化交流としては随分と荒っぽい。
豚タンおろしポン酢は、薄切りの豚タンに大根おろしと薬味を合わせた一皿。
先ほどの牛タンとは違い、ポン酢の酸味でさっぱりと食べられる。
しかし、牛タンの次は豚タン。
せっかく何でもある居酒屋に来ているのに、二種類もの動物の舌を注文している。
我ながら部位に対する執着が強い。
続いて砂肝。
コリコリした独特の歯応えに、香ばしい薬味の刺激が重なる。
噛むほどに存在感が増す、酒のつまみに向いた一皿だ。
一方のせせりは、首まわりの肉ならではの脂の旨味とプリッとした弾力。
野菜と合わせることで重たさを抑え、砂肝とは違った肉の楽しみ方ができる。
同じ鶏でも部位によって食感も脂の質も変わる。
牛と豚の舌を食べ比べたあとは、鶏の首と胃袋まで食べ比べている。
こうして並べると、俺の食事には解剖学の要素が多すぎる。
最後は長芋わさび漬け。
シャキッとした歯触りとわさびの刺激が、肉や揚げ物の続いた口をさっぱりと切り替えてくれる。
ここでようやく健康的なものを食べた気がした。
もっとも、すでに揚げ物を二種類食べている。
長芋も、ここまで不利な状況で登場するとは思わなかっただろう。
振り返れば、煮込みに魚、牛タンに豚タン、タコ、串揚げ、チーズ、砂肝、せせり、長芋。
煮る、炒める、揚げる、和えると調理法も幅広く、それぞれ食感や味付けの方向性が異なる。
一軒でこれだけ選べるのは、大衆酒場ならではの面白さだ。
ただ、帰ってから注文内容を振り返って思った。
俺はいったい何を食べたかったんだろう。
最初は煮込み。
次は魚。
その後は牛と豚の舌を食べ比べ、タコを挟んでフランスのチーズを天ぷらにし、最後は鶏の首と胃袋。
ここまで一貫性のない食生活を送っておきながら、長芋で健康に気を使ったつもりになっている。
しかも、どれも自分で注文している。
店の品揃えが豊富なのは確かだ。
しかし、この日の食事で最も驚いたのは、俺の欲望にも品揃えがあったことだ。
何でもあるのに何でもうまい。
店の掲げる言葉は実に頼もしい。
ただ、その言葉には一つだけ欠点がある。
何でもあるからといって、何でも頼む必要はない。
41年近く生きてきて、そんな当たり前のことを池袋の居酒屋で学ぶとは思わなかった。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#くろちゃん
#池袋居酒屋
-
1番美味いと思うラーメン。板橋本町元祖まぐろラーメン本店2026年10月17日 13:20濃厚豚骨、淡麗、煮干し、鶏水系。新しい店が生まれるたびに技術は更新され、昔では考えられなかったような一杯にも何度も出会ってきた。それでも、一番美味しいラーメンはどこかと聞かれたら、俺の答えは高校生の頃から変わらない。板橋本町の元祖まぐろラーメン本店。長く通っている店には、どうしても思い出補正が入る。だからこそ何度も考えた。昔から食べているから好きなだけなんじゃないかと。でも、久しぶりにここで一杯食べるたび、その疑いはきれいに消える。やっぱりここが一番美味い。1993年創業。土佐っ子やなんでんかんでんが環七を沸かせていた、いわゆる環七ラーメン戦争の時代から30年以上暖簾を守り続け、2026年には大山に2号店も誕生した。豚骨全盛だった時代に、この店が選んだのは生のマグロから出汁を取るという道。創業者の鮪郎さんが独学で研究を重ね、マグロの頭だけでなく鯛や野菜も使いながら、魚臭さを抑えて旨味だけを引き出していく。さらに煮込んだマグロの頭を弱火で約40時間かけて炊き、抽出したまぐろ油はタレそばへ。元祖まぐろラーメンという名前のインパクトだけで30年以上残ってきた店ではない。暖簾をくぐれば、年季の入った厨房に大きな寸胴。壁には写真や記事が並び、その中には今まで生きてきた中で一番おいしいと書かれた大塚愛のポスターも残っている。今どきの店のように整えられたレトロではない。ここで何十年もラーメンを作り続けてきた時間そのものが、そのまま店の景色になっている。今回は醤油ラーメン、醤油ラーメン丼、味噌タレそば。まずは醤油ラーメン。丼いっぱいに浮かぶ細かな背脂。見た目だけなら、環七らしい荒々しく重たい一杯を想像する。ところがスープを口に含むと、その印象が一気に変わる。まぐろを使っているのに、いわゆる魚介ラーメンのように魚の香りを前へ押し出してこない。マグロは主張するためではなく、スープの奥行きを作る側に回っている。そこへ醤油のキレと背脂の甘み。濃すぎない。軽すぎない。派手な一口目で驚かせるのではなく、食べ進めるほど、このバランスから抜けられなくなる。チャーシュー、メンマ、ネギ、海苔、ナルト。今となっては昔ながらとも言える構成だが、このスープにはこれでいい。余計なものを足す必要がない。最後に残ったスープまで自然と口を運びたくなる。俺にとって、この醤油ラーメンがずっと基準だ。続いて醤油ラーメン丼。名前だけ聞くと、普通のラーメンなのか丼なのかすら分からない。ここからが、この店らしい。タレをまとった麺を食べ進めていくと、その下からご飯が現れる。麺だけを食べて終わりではない。残ったタレと具材をご飯までしっかり混ぜて食べるところまで含めて、一つの料理になっている。ラーメンとも油そばとも丼とも少し違う。昔からここにある、この店独自の食べ方。一杯の中で麺から米へと主役が入れ替わるのに、味の流れは途切れない。これを知ってしまうと、普通の汁なし麺では物足りなくなる。最後は味噌タレそば。長時間かけてマグロの頭から抽出したまぐろ油を使い、スープの中へ旨味を溶かしていく醤油ラーメンとは逆に、こちらはタレと油を直接麺へ絡ませて食べる。太さのある麺に味噌ダレがしっかりまとい、チャーシュー、半熟玉子、メンマ、ネギ。噛むたびに味噌の濃さが押し寄せるが、それだけで終わらない。その土台にマグロ由来の旨味があるから、濃厚なのに単調にならず、最後まで箸が止まらない。同じ店で、同じマグロという軸を持ちながら、醤油ラーメンとはまったく別の方向から旨さを作っている。この店はメニューも多い。初めて来れば何を頼むか迷うと思う。それでも俺なら、まず醤油ラーメンを食べてほしい。そこからタレそばへ進み、醤油ラーメン丼まで辿り着けば、元祖まぐろラーメンが単なる珍しさだけで環七に残ってきた店ではないことが分かると思う。高校生だった頃から今まで、その間に数え切れないほどラーメンを食べた。流行も変わった。店も変わった。俺自身の好みだって少しずつ変わってきた。それでも、ここだけは変わらない。昔から好きだから一番なのではない。今食べても、やっぱり一番美味しいと思える。元祖まぐろラーメン本店は、店の評価を確かめに来る場所ではなく、自分の舌に刻まれた基準が今も変わっていないことを確かめに来る場所だ。#DOLCE1#歌舞伎町ホスト#愛川美輝#元祖まぐろラーメン本店#板橋本
-
神田の老舗焼鳥。◯鳥本店2026年10月16日 14:41
神田で、自己肯定感がやたら高い焼鳥屋に入った。
「心に残るあったかサラダ」
「極上白レバー串」
「いいとこ鶏盛合せ」
メニューがいちいち自分を褒めている。
こんな自己紹介をする人間がいたら少し距離を置く。
でも料理なので、全部頼んだ。
神田駅西口から徒歩30秒。
2012年9月11日オープンの「◯鳥 マルドリ 神田本店」。
まずは「心に残るあったかサラダ」。
正直、これまでの人生でサラダのことを思い出して眠れなくなった夜は一度もない。
ずいぶん大きく出たな、と思った。
運ばれたのは黒い鍋。ブロッコリー、カボチャ、根菜にとろけたチーズ。ソーセージまで入っている。
最初に野菜を食べておけば、その後の暴飲暴食は少しだけ許される気がしていた。
ところが、肝心の野菜がチーズとソーセージを連れてきた。
開始早々、健康の話をするのが難しくなった。
でも旨い。温野菜の甘みにチーズの塩気とコクが絡み、ソーセージの旨味も加わる。サラダというより、立派な酒のつまみだった。
健康目的だったことは忘れよう。
続いて砂肝、ささみ、ぼんじり、せせり。
砂肝は歯切れよくコリッと、ささみはしっとり柔らかい。柚子胡椒が淡白な身を引き締める。
ぼんじりは脂の甘みが濃く、せせりは弾力があり、噛むほど旨味が増す。
同じ鶏とは思えないほど食感が違う。
ここで「鶏肉が好き」という自分のプロフィールが、思っていたより雑だったことに気づく。
そして看板の「極上白レバー串」。
表面に香ばしい焼き目があり、中心は赤みを残してしっとり。口に含むとなめらかで、濃厚なコクが広がる。
レバーらしい旨味はあるのに、癖が強く出ていない。看板にするだけの理由がある。
これはもう一本食べたかった。
極上という言葉を疑っていた数分前の俺に、謝罪の機会を与えたい。
続いて鶏軟骨、ハツ、もも。
軟骨の軽快な歯応え、ハツの締まった弾力、ももの香ばしい焼き目と肉汁。串が続いても味と食感が単調にならない。
さらに「いいとこ鶏盛合せ」。
この日はもも、ささみ、皮の三種類。
そう。さっき食べたものが、もう二種類ある。
注文を間違えたわけではない。
炙りの香ばしさがあるもも、しっとりしたささみ、独特の食感と旨味の皮。わさびやレモンで食べると、串とは別の魅力がある。
同じ部位をもう一度頼んだことに、これでちゃんと理由がついた。
そして「チキン南蛮タルタル」。
ここまで自分を褒める名前が続いていたのに、これは普通の名前だった。
代わりに、見た目が普通ではなかった。
タルタルが多い。
あまりに多くて、チキン南蛮の感想を書く前にタルタルの感想を書く羽目になった。
ただ、衣の香ばしさに卵感の残る濃厚なタルタル、甘酸っぱさと黒胡椒の刺激がよく合う。キャベツが重さを和らげるのもいい。
最初はタルタルが多すぎると思ったのに、食べ終わる頃にはもう少しあってもいいと思っていた。
自分の発言に責任を持てない。
最後は「鶏がらラーメン」。
淡い鶏出汁のスープに麺、鶏肉、わかめ、胡麻。旨味はあるのに重たすぎず、散々食べた後でもするっと入る。
砂肝から始まって、ささみ、ぼんじり、せせり、白レバー、軟骨、ハツ、もも、皮。
最後は骨の出汁まで飲んだ。
鶏を余すところなく楽しんだと言えば聞こえはいい。
実際は、途中で一度もブレーキを踏まなかっただけだ。
最初のサラダで健康を気遣った男は、結局これだけ食べた。
しかも帰り道、あの「心に残るあったかサラダ」のことを思い出していた。
まさか本当に心に残るとは思わなかった。
何が悔しいって、店の言う通りになったことだ。
ただ、一番心に残ったのは白レバーだった。
サラダには申し訳ない。
最初から相手が悪かった。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#神田鳥心 本店
#神田
-
成蔵の系譜。絶品白とんかつ。飯田橋とんかつ憲進2026年10月15日 13:39とんかつは茶色い。少なくとも俺は、そう教わって生きてきた。ところが飯田橋には、油に入れられているのに、ほぼ白いまま帰ってくるとんかつがいる。揚げ物界でここだけ美白意識が高すぎる。飯田橋駅B4b出口から徒歩5分ほど。軽子坂のビル2階にある、とんかつ憲進。2023年3月7日オープン。高田馬場の名店なりくらで3代目店長を務めた店主が独立し、2026年には食べログとんかつ百名店にも選出されている。しかも店主は5年以上とんかつを研究し、パン粉や油はもちろん、揚げ鍋の直径にまでこだわったという。普通の人間なら鍋を見ても、大きいか小さいかで会議は終了する。ここでは直径まで味づくりに参加している。そして、この白い衣は映え狙いではない。糖度を抑えた特製パン粉を使い、背脂より融点の高い腸間膜油を用いた油で低温からじっくり火を入れる。店主が考えるとんかつは、揚げ物でありながら蒸し料理。油で焦がすのではなく、衣の内側に水分を閉じ込め、肉を蒸すように仕上げていく。とんかつを食べに来たはずなのに、開始早々こちらの常識だけが先に揚げられた。まずは常陸の輝き ロースかつ定食。運ばれてきた瞬間、やはり目が行くのは衣。狐色どころか、ふわっと淡い白。パン粉一本一本が立ち、肉の周囲に羽毛のようにまとわりついている。一口目は何もつけずに。衣はガリガリ主張するタイプではなく、軽くほどけて消えていく。その直後に来るのがロースの旨味と脂の甘さ。特に脂がいい。しっかり甘いのに、後口が重くない。脂身を食べているというより、赤身と一緒になって旨味を完成させている感覚に近い。ここまで来ると、普段とんかつの脂身を残す人にも一度黙って食べさせたくなる。卓上にはブラックソルトとピンク岩塩。そのままで十分旨いが、塩を変えると脂の甘みや肉の輪郭まで変わって感じられる。ソースをかけて完成するのではなく、何もつけない状態ですでに料理が成立している。ソースに仕事を丸投げしていないとんかつは強い。続いて常陸の輝き ヒレかつ3個定食。丸々としたヒレが三つ並ぶ。見た目だけなら、キャベツの前に小型の座布団が置かれている。厚みがあるのに、歯を入れると柔らかくほどける。ヒレで心配するパサつきもなく、噛むほど赤身の旨味が広がる。ロースが脂まで含めた総合力なら、ヒレは豚そのものの実力で殴ってくる。同じ常陸の輝きでも、食べ比べると性格がまるで違う。そしてエビフライ2本定食。とんかつ屋でエビフライを頼む時、正直こちらとしては助演くらいの気持ちでいる。ところが出てきた二本がでかい。海老が皿の上で完全に主演席へ座っている。しかも二本とも譲る気がない。こちらも衣は軽く、太い海老のプリッとした弾力と甘みを邪魔しない。自家製タルタルを合わせればさらに濃厚になるのに、不思議と重さは残らない。今日は豚を食べに来た。海老はその辺を一切考慮していない。ご飯、豚汁、漬物、キャベツまで含め、定食としても隙がない。そして一番困るのが、この白い衣。あまりにも軽い。ロースを食べる。ヒレを食べる。海老まで食べる。普通なら胃袋から、そろそろ閉店です、と連絡が来る頃なのに、ここではなかなか来ない。むしろ脳が、今のとんかつ本当に食べた?と確認してくる。食べた。結構食べた。それでも次の一切れに手が伸びる。白いとんかつという見た目だけなら、一度見れば話は終わる。憲進がすごいのは、その白さにちゃんと理由があり、ロースでは脂の甘さ、ヒレでは赤身の旨味、エビフライでは海老の存在感と、同じ衣の中から主役それぞれの良さを引き出していること。百名店だから旨いのではない。パン粉、油、温度、火入れ。細部を突き詰めた結果として、旨い。白いとんかつを食べに行ったはずなのに、最後に残った感想は白さではなかった。とんかつって、ここまで軽くて、ここまで旨くできるんだな。見た目で一回驚かせて、味でもう一回黙らせる。憲進、これはかなり好きだった。#DOLCE1#歌舞伎町ホスト#愛川美輝#憲進#飯田橋
-
春日亭高田馬場店の油そば。2026年10月13日 18:06
油そばという料理は、名前の時点で少し損をしている。
ラーメン。つけ麺。油そば。
ほかの二つは美味しそうなのに、最後だけ健康診断で注意されそうな名前をしている。
しかも、その油そばに「最強」を掲げて商売している店がある。
反省の色がまったくない。
高田馬場駅から徒歩30秒。
2019年2月オープンの「油そば 春日亭 高田馬場駅前店」。
注文したのは一番人気の鳥豚油そば。
今回は味玉も追加した。
着丼して、まず目を疑う。
これ、本当に汁なしなのか。
丼には乳白色の濃厚な鳥豚スープが広がり、中央にはもやしの山。その上を大判のチャーシューが覆い、赤い唐辛子が容赦なく振りかけられている。
脇にはメンマと追加した味玉まで鎮座。
スープのないラーメンを注文したはずなのに、スープが誰よりも張り切っている。
もはや汁なしというより、汁の自己申告制である。
ただ、この白濁した鳥豚スープこそ春日亭の真骨頂。
鶏ガラと豚骨をじっくり2日間煮込み、旨味を凝縮させているという。
鶏と豚が48時間かけて共同開発したスープ。
こちらは注文して数分で食べるのに、向こうの準備だけ異様に長い。
合わせるのは北海道産小麦100%の究極麺。
箸で持ち上げれば、太めの縮れ麺に濃厚なタレと脂がこれでもかと絡みついてくる。
ずるっとすする。
重い。
しかし、ただ油っこいだけではない。
もちっとした麺の噛み応えに、鶏のまろやかな旨味と豚の力強いコク。そこへ醤油ダレの塩気と脂の甘みが重なり、口の中を一気に支配してくる。
もはや味覚への合法的な暴力である。
それでも次の一口が欲しくなるのは、単純な脂の強さではなく、動物系の旨味にしっかりと厚みがあるからだ。
そこへもやしのシャキシャキした食感が入り、濃厚なタレ一辺倒にならないのもいい。
メンマの歯応え、大判チャーシューの存在感、追加した味玉のまろやかさ。
全員が主役を狙っている。
具材同士の自己主張が激しく、もはや丼の中が芸能事務所のオーディション会場である。
卓上のお酢やラー油などで味を調整できるのも、油そばの面白いところ。
これだけ濃厚な味わいだからこそ、途中で酸味や辛味を加えれば、また違った表情を楽しめる。
さて。
ここまででも十分に満足できる一杯なのだが、この店には恐ろしい続きがある。
卵かけご飯だ。
普通、卵かけご飯といえば、白飯に卵を割って醤油を垂らすだけの平和な料理を想像する。
ところが春日亭は違う。
運ばれてきたのは、香ばしく焼かれた細切りチャーシューをのせたご飯と生卵。
さらに「かけごはんタレ」まで用意されている。
卵かけご飯に対する準備が妙に周到だ。
そして、ここからが本番。
油そばを食べ終えた丼に、残った濃厚な鳥豚スープを活用してご飯を豪快に投入。
そこへ生卵を落とす。
待ってほしい。
さっきまで油そばを食べていたはずなのに、今度は同じ丼で米を食べようとしている。
麺が退場したと思ったら、白米がそのまま居抜きで入居してきた。
しかも前の住人が残した濃厚な鳥豚スープを、敷金どころか全額いただく仕組みである。
さらに、かけごはんタレまで加わる。
もう誰もブレーキを踏んでいない。
これを混ぜ合わせて食べれば、鳥豚の旨味をまとった米に生卵のまろやかさが加わり、細切りチャーシューの香ばしさまで追いかけてくる。
美味くないわけがない。
普通の卵かけご飯なら醤油が味の中心だが、こちらは2日間煮込んだ鳥豚の旨味が土台になっている。
もはや卵かけご飯というより、鳥豚リゾットの和風ジャンク版。
麺を食べ終えて残ったタレが、最後にもう一度主役になる。
これは実に合理的な食べ方だと思う。
ただし、食材の使い方は合理的でも、胃袋への配慮が合理的とは限らない。
炭水化物を食べ終えた後に、別の炭水化物を投入する。
しかも脂と卵で徹底的に補強する。
食事の〆というより、胃袋に対する追加攻撃である。
濃厚な味が最後まで続くので、あっさり食事を終えたい人には少々重いかもしれない。
一方で、鳥豚のコクを余すことなく堪能したい人には、この卵かけご飯まで含めて完成された一食だと思う。
油そばを食べに来たはずなのに、最後は卵かけご飯にまで胃袋を掌握される。
しかも、よく考えたら最初から最後まで鶏と豚に世話になっている。
2日間煮込んだスープの最終的な就職先が、まさか白米だったとは。
世の中には「ダイエットは明日から」という便利な言葉がある。
ただ、春日亭で一番恐ろしいのは、脂の量でも炭水化物の量でもない。
これだけ食べた後なのに、また来ようと思ってしまうことだ。
俺の意志が弱いのか、春日亭が強すぎるのか。
少なくとも胃袋の主導権は、完全に向こうに握られていた。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#春日亭
#高田馬場
-
手際よし味よしコスパ良し。新大久保マッコリの物語2026年10月12日 15:39
韓国料理屋で「今日は軽く食べよう」と言う人間を、俺はあまり信用していない。
そういう人に限って、最後に鉄板へ米を投入する。
しかも本人は、それを〆と呼んでいる。
発言と行動が一致していない。
新大久保駅から徒歩5分。
2010年9月1日オープンの「マッコリの物語」。
名前はやけに文学的だが、ここで繰り広げられるのは恋愛小説ではない。
満腹に対する計画的犯行である。
まずは大根のおかず、オムク、キムチのパンチャンから。
甘辛い味付けと野菜の歯応えで食欲を刺激する。
この時点では、まだ平和だった。
最初の主役はカンジャンケジャン。
醤油ダレに漬けたワタリガニに、サーモン、卵黄をのせたご飯、韓国海苔まで並ぶ。
カニを注文したはずなのに、登場人物が多い。
カニの魅力は、ねっとりとした身の甘みと甲殻類特有の濃厚な旨味。
醤油の塩気が強すぎれば素材の繊細さが消えてしまうが、ここはカニの甘みをしっかり楽しめる。
そこへ卵黄を絡めたご飯。
卵のコクが醤油の角を包み、海苔の香りが加わると、カニの旨味を余すことなく米で回収できる。
まだ一品目なのに、ご飯の進み方が最終回である。
続いてチュクミサムギョプサル。
鉄板には真っ赤なイイダコと豚バラ肉。
中央には2色のチーズ、周囲には豆もやしとネギ。
海と陸の生き物を同じ鉄板に集め、全員まとめて焼いていく。
なかなか強引な合同研修である。
しかし、この組み合わせがよくできている。
イイダコのプリッとした弾力に、焼き目のついた豚バラの香ばしさと脂の甘み。
甘辛いタレを豚の脂が受け止め、チーズが辛味をまろやかにする。
さらにサンチュ、大根の甘酢漬け、トルティーヤまで登場。
韓国料理を食べていたら、突然メキシコから応援が来た。
ところがこれがいい。
トルティーヤで肉とタコを包み、チーズを絡め、大根の甘酢漬けを合わせる。
濃厚な脂と甘辛いタレを、酸味と野菜の瑞々しさが綺麗に切ってくれる。
味を重ねるだけでなく、ちゃんと引き算ができている。
続くブンモジャロゼトッポキ。
今度は大皿いっぱいのオレンジ色。
太いブンモジャが濃厚なロゼソースに沈み、チーズまで加わる。
ブンモジャの魅力は、通常のトッポキとは異なる、むっちりとした独特の弾力。
噛むほどにモチモチとした食感が際立ち、クリーミーなコクの奥から甘辛さが追いかけてくる。
韓国屋台料理が急にイタリアへ留学した。
さっきメキシコにも行ったばかりなのに、胃袋のパスポートが忙しい。
ただ、かなり濃厚なので、ここは複数人でシェアするのが正解。
そして今回、最も存在感を放っていたのが石焼ホルモンジャージャン麺。
運ばれてきた瞬間、少し困惑する。
麺が見えない。
大量のミナリと、とろけたチーズが石鍋を覆っている。
もはや麺料理というより、緑地開発と酪農業の共同事業である。
その下に潜んでいるのが、濃厚なジャージャン麺とホルモン。
黒味噌の甘辛いコクに、ホルモンの脂と噛み応え。さらにチーズの濃厚さまで重なる。
普通なら胃袋への圧力が強すぎる。
そこで仕事をするのが大量のミナリ。
独特の青い香りとほろ苦さが、濃厚なソースの中に爽やかな抜け道を作っている。
チーズで味を足すだけでなく、ミナリで重さを逃がす。
この組み合わせは面白い。
そして、ここからが本番。
残ったソースにご飯と海苔を投入して〆炒飯。
いや、待て。
カニを食べ、豚とタコを焼き、ブンモジャを食べ、ホルモンと麺まで食べた。
普通ならエンドロールが流れている。
ところが店員さんは、何事もなかったように米を炒め始める。
続編の制作決定が早すぎる。
石鍋の熱で米に香ばしい焼き目がつき、濃厚なソースとホルモンの旨味を吸い込んだご飯に、海苔の風味とカリッとしたおこげが加わる。
麺とはまた違った美味しさ。
これだけ食べたのに、最後の一口を惜しんでいる自分がいる。
〆炒飯とはよく言ったものだ。
終わらせる気がまったくない。
一見すると映え重視の豪快な韓国料理だが、単に辛く濃くすればいいという作りではない。
豚の脂には甘酢漬け、濃厚な黒味噌にはミナリ。重たい料理を最後まで食べ進められる工夫がある。
ただし、どれも主役級のボリュームなので、注文しすぎには注意したい。
マッコリの物語。
読み終えて分かった。
これは短編ではない。
最終章に炒飯が待ち構えている、胃袋を人質に取った長編小説だった。
しかも恐ろしいことに、食べ終わった本人が次回作を楽しみにしている。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#マッコリの物語
#新大久保
-
NOT A PIZZA。祐天寺のおしゃれイタリアン2026年10月11日 15:51
ピザ屋に入った。
店名は、NOT A PIZZA。
開始3秒で話が噛み合っていない。
こっちはピザを食べに来ているのに、向こうは入口から「ピザじゃない」と言い張っている。
しかも店内の中央には、ナポリの名工ステファノ・フェラーラ社製の巨大な薪窯。
証拠がデカすぎる。
祐天寺駅東口から徒歩3分。
2022年5月23日オープンのNOT A PIZZA。
ナポリピッツァの伝統的な型に縛られず、もっと自由にピザを楽しむことを掲げる店で、生地は長期熟成、高加水。
500℃前後まで上げた薪窯で一気に焼き上げる。
ピザじゃないと言いながら、ピザへの執念だけはかなり重い。
まずは炙りサーモンとアボカドのサラダ。
大皿の中央にはトングが豪快に突き刺さっている。
取り分け用というより、
「説明はいいから早く食え」
という店からの意思表示に近い。
炙ったサーモンは脂に香ばしさが乗り、濃厚なアボカドと合わせても重たくなりすぎない。
ピンクペッパーが時折弾けて、まろやかなソースの中にキレを作る。
サラダという名前で出てくるが、仕事内容としては完全に酒の勧誘係である。
続いて揚げ茄子のバルサミコソース。
茄子という野菜は、油を吸わせると急に人格が変わる。
表面は艶々。
中はほとんど噛む必要がないほどトロトロ。
そこへバルサミコの濃厚な甘酸っぱさと、チーズの爽やかな乳味が重なる。
油、酸味、乳味。
かなり強い要素を重ねているのに、茄子の水分が間に入ることでクドさを残さない。
普段は麻婆茄子あたりの後方で静かに働いている野菜が、突然センターに立っている。
そして本命、すき焼きPIZZA。
薪窯で焼かれた生地の上に牛肉、春菊、九条ネギ、モッツァレラ。
中央には卵。
イタリアの職人が見たら、一度話し合いの場を設けられそうな布陣である。
まず生地が旨い。
縁はふっくら膨らみ、表面には薪窯特有の香ばしい焦げ。
中にはきちんと水分が残り、軽い。
そこへ甘辛い牛肉、ネギと春菊の青い香り、モッツァレラのコク。
そして卵を崩す。
この瞬間、ピザの国籍が完全に日本になる。
割り下を思わせる甘辛さを卵とチーズが包み込み、生地が全部を受け止める。
具材だけ見ればかなり重そうなのに、生地が軽いから一枚として破綻しない。
「自由なピザ」というこの店の考え方が、一番分かりやすく現れている一枚だと思う。
海老のトマトクリームパスタ。
深緑の皿で登場するが、まず目に入るのは皿のフチ。
チーズが、そこまで必要かという範囲まで削られている。
料理人に余白という概念があるのか少し心配になる。
だが食べると、この過剰さにもちゃんと理由がある。
海老の旨味を含んだ濃厚なトマトクリームに、トマトの酸味が残ることで味がダレない。
プリッとした海老に、もちっと食べ応えのある麺。
さらに皿のフチのチーズまで巻き込みながら食べると、コクが一段上がる。
飾りではない。
全部食わせる気だった。
ここでようやく店名にも少し納得する。
確かに、ピザだけの店ではない。
最後はバスクチーズケーキ、バニラアイス添え。
黒い皿に粉糖が豪快に広がり、その中央にしっかり焼き色のついたバスクチーズケーキ。
余白はない。
さっきのパスタから一貫して、皿を空けておくことに強い抵抗があるらしい。
表面の焦げから来るビターな香ばしさ。
中は濃厚でなめらか。
そこへ冷たいバニラアイスを合わせることで、温度と甘さの輪郭が変わる。
最後くらい軽く終わるのかと思ったが、乳製品が最後まで全力で追ってきた。
NOT A PIZZA。
最初は、ずいぶん天邪鬼な名前だと思った。
でも食べ終えると少し意味が変わる。
すき焼きを乗せてもいい。
パスタにも本気を出していい。
茄子が主役になってもいい。
「ピザ屋なんだからこうしなければいけない」という枠そのものを、店名から外している。
ピザじゃないと言いながら、
誰より真面目に生地を作り、
最高峰の薪窯を置き、
そこから好き放題やっている。
店名はNOT A PIZZA。
ただし薪窯だけは、最後まで一切ふざけていなかった。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#NOTAPIZZA
#祐天寺
-
のどぐろ出汁おでんと江戸前鮨。恵比寿粋はなれ2026年10月10日 12:29
恵比寿で「鮨」と「おでん」を同時に掲げる店には、少し警戒する。
二兎を追う者は一兎も得ず。
鮨もできます。
おでんもできます。
そう風呂敷を広げた結果、どちらも「まあ普通」に着地する店は珍しくない。
しかも店名は、
江戸前鮨 のどぐろ出汁おでん 粋はなれ 恵比寿店。
長い。
読み終わる頃には、もう一杯目を頼みたくなる。
2025年7月18日オープン。
江戸前鮨とのどぐろ出汁おでんを二枚看板に掲げる店だが、今回はコースではなくアラカルト。
気になったものを好き勝手に攻めた。
まずは辛味かんぱち。
薄く引かれたかんぱちに辛味ダレ。
身の弾力と脂の甘みに、キレのある辛さが重なる。
辛味という名前だから当然なのだが、本当にちゃんと辛い。
こちらが油断している間も、辛味だけは職務に忠実である。
続いてカニと魚卵まみれ。
カニ、いくら、とびこ、数の子。
魚介界でも声の大きそうな連中だけを集めたような一皿だ。
プチプチ、コリコリ、ねっとり。
全員が主役を譲る気ゼロなのに、口に入るとなぜかまとまる。
痛風の足音が遠くから全力疾走で聞こえてきそうだが、この時だけは聞こえないふりをした。
梅水晶×ネギトロ 旨和え。
まったりとしたネギトロに、梅水晶のコリッとした食感と酸味。
脂の強さを梅が切り、食感にも変化をつける。
濃厚なのに重たく残らない。
酒の肴としてかなり優秀である。
地鶏せせりポン酢。
ここまで海だったのに、突然鶏が入社してくる。
せせりらしい弾力と旨味に、ネギ、胡麻、ポン酢。
部署は完全に違うのに、不思議なくらい馴染んでいる。
しかも箸休めの顔をしながら、普通に酒を追加させにくる。
休ませる気はない。
そして店の主役、のどぐろ出汁のおでん五種盛り。
とろろ昆布大根、卵、焼きちくわ、アサリ、こんにゃく。
特に大根。
大ぶりの大根に出汁が染み、とろろ昆布まで重なることで旨味がさらに厚くなる。
そこへアサリ。
のどぐろ出汁にアサリまで入る。
魚介の出汁に魚介を追加しているので、もう海が会議に参加しているどころか議長席に座っている。
卵、焼きちくわ、こんにゃくという王道もしっかり受け止め、派手さより出汁そのものを楽しませるおでんという印象。
砂肝ガーリックは一転して豪快。
コリッとした砂肝にガーリックの香り。
レモンを絞れば後味は軽くなるが、ニンニクの存在感まで消えるわけではない。
ここまで少し割烹らしい顔をしていた店が、急に「酒飲むよね?」と本性を出してくる。
そして鰻細巻き生七味添え。
鰻の甘辛い旨味に、生七味の鮮烈な辛味。
濃い余韻をそのまま引っ張らず、最後をピリッと切る。
巻物なのに妙に酒が欲しくなる。
結局この店、「鮨か、おでんか」ではなかった。
魚卵で海を渋滞させ、鶏を途中入社させ、のどぐろ出汁で一度こちらを落ち着かせたと思えば、砂肝にニンニクをぶつけてくる。
全然落ち着かせる気がない。
鮨、おでん、魚、肉、創作つまみ。
普通なら散らかりそうな構成なのに、アラカルトで好きに選ぶと、この欲張りさがむしろ楽しい。
二兎どころか何羽追っているのか途中から分からなくなったが、気づけば全部、酒の方向へ走っていた。
かなり粋な欲張り方だった。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#江戸前鮨のどぐろ出汁おでん粋はなれ恵比寿店
#恵比寿
-
全部牛タンを元に作るメニュー。炭火焼き 牛タン酒場 いけたん 池袋店。2026年10月8日 16:29
牛タン専門店で一番怖いのは、途中から全部同じ料理に見えてくることだと思っている。
焼いた牛タン。
また焼いた牛タン。
さっきより少し厚い牛タン。
気づけば牛タンが服だけ着替えている。
ところが池袋には、その牛タンを異常なほど働かせる店がある。
池袋駅東口から徒歩2分。
炭火焼き牛タン酒場 いけたん 池袋店。
2023年9月22日オープン。
紀州備長炭で焼くのはもちろん、低温調理、煮込み、味噌焼き、最後は釜飯。
牛タンの勤務形態が多すぎる。
まずはお通しからスタート。
続いて牛タンユッケ。
店のメニューでは池袋1を名乗っている。
まだこちらは箸を持っただけなのに、向こうはもうタイトルマッチである。
低温調理した細切りのタンに卵黄。
崩して絡めれば、タン特有の弾力を残しながら、卵黄の濃厚さとタレがまとわりつく。
ただ柔らかいだけではなく、噛んだ時にちゃんと牛タンがいる。
この食感は酒に強い。
次はいけたんサラダ。
肉の合間に野菜でも食べようと思ったら、当然のようにここにも牛タンがいる。
店側に、客を野菜だけで休ませる気はない。
炭火で焼いたタンとたっぷりの野菜を自家製ダレで合わせる。
香ばしい肉を食べながら、野菜の瑞々しさで口が軽くなるので、タン尽くしの中できちんと役割のある一皿だ。
そして名物のゆでタン。
箸を入れると、厚みから想像する抵抗がほとんどない。
焼いたタンの弾力とは真逆。
澄んだ出汁を含んだ肉が、噛むというよりほどけていく。
さっきまで炭火の上で威勢よくやっていた牛タンが、急にものすごく穏やかになった。
牛タンにも老後があるらしい。
続いてタン盛り合わせ。
ピリ辛味噌焼き、西京焼き、ネギ塩焼き。
ここが面白い。
同じ牛タンなのに、三者面談したら全員別の進路を希望している。
ピリ辛味噌は豆板醤を効かせた濃い味で酒を呼び、西京焼きは甘みと旨味に炭火の香ばしさが重なる。
ネギ塩は塩気とネギの香味で一番ストレート。
単にタレを変えただけではなく、味付けによってタンの印象そのものが変わる。
特に西京焼き。
まろやかな甘さの後ろから炭の香りが抜けて、これがかなり酒泥棒だった。
そして厚切り牛タンステーキ。
ここで急に体格が良くなる。
表面には炭火の香ばしさ。
中にはしっかり厚みを残した肉。
歯を入れた時のザクッとした感触から、噛むほどに牛タンらしい旨味が出てくる。
俺は牛タンに、柔らかさだけを求めていない。
厚切りなら、それなりに歯を使わせてほしい。
その点これは、ちゃんと肉を食べている満足感がある。
タレでも楽しめるが、肉そのものがいいからこそ、個人的には塩とワサビくらいで食べるのが一番好きだった。
ここまでユッケ、サラダ、煮込み、ピリ辛味噌、西京、ネギ塩、厚切りステーキ。
牛タン、転職回数が多すぎる。
そして本日のアイス。
この日はチョコ。
ここでようやく牛タンが退勤した。
チョコアイスとホイップで、炭火と肉で埋め尽くされた口の中を甘くリセット。
普通ならここでごちそうさまでした。
ところが最後に、いけたん釜飯。
デザートの後に米が来た。
食事の時系列が一度解散した。
牛タンと麦飯を炊き上げる釜飯は、完成まで約30分。
つまり最後に食べたいのに、早めに注文しなければならない。
今回、釜が仕事をしている間にチョコアイスが先にゴールしてしまった。
蓋を開ければ、湯気と一緒に牛タンと出汁の香り。
米に旨味が入り、焼く、煮るとはまた違う形で最後に牛タンが戻ってくる。
退勤したと思ったら残業だった。
牛タン専門店というより、もはや牛タンの総合商社。
低温調理され、サラダに乗り、煮込まれ、味噌をまとい、ネギを背負い、厚切りで焼かれ、最後は米と釜に入る。
一つの食材をここまで続けても飽きないのは、調理法だけでなく食感と味の方向まできちんと変えているから。
この日の俺より間違いなく牛タンの方が働いていた。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#炭火焼き牛タン酒場いけたん
#池袋
-
かき氷といえばここ。谷中ひみつ堂2026年10月7日 15:55
かき氷は、氷が旨ければ成立するわけでも、果物をたくさん乗せれば贅沢になるわけでもない。
削った氷がどう溶け、その一瞬に蜜と果実の旨味をどこまで乗せられるか。
ただ甘くて冷たいだけなら、途中で飽きる。
むしろ難しいのは、最後の一口まで果実を濃く感じさせながら、重たくさせないことだと思う。
その完成形を求めて、谷中のひみつ堂へ。
2011年5月22日創業。
屋台から始まり、現在も日光の三ツ星氷室から仕入れる天然氷を使い続ける、東京を代表するかき氷専門店の一つ。
谷中の路地を抜けると現れる、簾と赤い格子戸。
中へ入れば、手動式の削氷機が氷を削る音が響き、外の街並みとは少し違う熱気に包まれる。
ひみつ堂の強さは、天然氷の名前だけではない。
昔ながらの手動式で削り、季節によって氷の削り方まで変える。
蜜も市販のシロップではなく、果物を主役に作る自家製の果実蜜。
ちなみに店名のひみつ堂も、秘密ではなく氷蜜が由来。
今回選んだのは、宮古島マンゴー三昧と桃三昧。
まずは宮古島マンゴー三昧。
運ばれてきた瞬間、氷より先にマンゴーが目に入る。
頂上には大きく切られた果肉。
その下には、白い氷がほとんど見えないほど濃いオレンジ色のマンゴー蜜がたっぷりとかかる。
一口目から、主役は完全にマンゴー。
かき氷にマンゴー味を付けたというより、マンゴーそのものを氷という形で食べている感覚に近い。
濃密な甘みとコクが押し寄せる一方で、繊細に削られた天然氷は口の中ですっと消えていく。
だから、これだけ果実感が強くても重くならない。
さらに食べ進めると、中から練乳生クリーム。
マンゴーの濃厚さにミルキーなコクが重なり、味の景色が一度変わる。
果肉、果実蜜、氷、クリーム。
一杯の中でそれぞれが役割を持っていて、単なるフルーツかき氷では終わらせない。
続いて桃三昧。
こちらも頂上には大きく切られた桃の果肉。
淡い桃色の蜜が氷全体を包み、マンゴー三昧とは見た目からまるで違う。
桃はマンゴーほど力で押してくる果物ではない。
だからこそ、香りや瑞々しさを消さずに、氷の中でどれだけ存在感を残せるかが難しい。
一口食べると、桃らしい柔らかな甘みと瑞々しさがすっと広がる。
無理に甘さを足して桃を強く見せるのではなく、繊細な果実感をそのまま前に出している。
そこへ中の練乳生クリームが入ることで、軽やかな桃に厚みが加わり、また違った表情になる。
マンゴーは濃厚。
桃は瑞々しい。
方向性は全く違う。
それでも共通しているのは、氷によって果物の味が薄まるのではなく、むしろ果実の輪郭がはっきりすること。
宮古島マンゴー三昧3400円。
桃三昧2600円。
かき氷として見れば、決して安くはない。
ただ、大量の果肉を乗せればいいわけでも、天然氷という言葉だけで価値を作っているわけでもない。
氷の削り方。
果実蜜の濃度。
果肉の存在感。
中に仕込まれた練乳生クリーム。
その全部を一杯の中で組み立て、最後まで果物を主役のまま食べさせる。
かき氷を食べたというより、旬の果実を一番贅沢な形で一杯丸ごと味わった。
行列や評判より、その事実だけでまた足を運びたくなる理由としては十分だった。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#ひみつ堂
#谷中
#百名店
-
スリランカ焼肉という初ジャンルながら焼肉百名店。澁谷ホルモン倶楽部あじくら2026年10月6日 16:14
焼肉屋でスパイスやカレー粉を大量に使い始めたら、少し警戒する。
肉の鮮度や質で勝負できるなら、そこまで味を重ねる必要はない。
だからカレー、バター、にんにくまで並ぶと、俺の中の面倒くさい部分が少し顔を出す。
本当に肉に自信があってやっているのか。
それとも勢いだけなのか。
向かったのは、神泉駅から徒歩2分。
渋谷・円山町のほるもん倶楽部 あじくら。
20年以上続く実力店だが、メニューを見ると少し様子がおかしい。
スリランカがいる。
しかも、かなり前のめりでいる。
まずはねぎめし。
白飯を大量のねぎと胡麻が覆い、中央には卵黄。
混ぜればねぎの鮮烈な香り、タレのコク、卵黄のまろやかさが一体になる。
これだけでも完成しているが、焼いた肉を乗せると本領発揮。
脂をねぎが切り、卵黄が米と肉をまとめる。
ただし問題がある。
まだ肉をほとんど焼いていないのに、米が減る。
焼肉屋で最初に起こしてはいけない事故が、開始数分で発生した。
続いて牛タンのスリランカカレーバター焼き。
アルミ皿の中にはタン、カレースパイス、にんにく、バター。
全員かなり声が大きい。
網の上で温めるとバターが溶け、肉汁とスパイスが絡み、にんにくの香りまで立ち上がる。
タンの弾力にバターの厚みとカレーの香り。
見た目はほぼ儀式だが、口の中ではちゃんと会議が成立している。
続いてスリランカカレーバターカルビ。
厚めのカルビを焼き、ぐつぐつ煮えたカレーバターへ。
カルビの脂。
そこへバター。
さらにカレー。
数学なら途中式を確認したくなる構成なのに、食べると脂の甘みをスパイスが締め、バターがカレーの角を丸くする。
濃い。
でも、ただ濃いだけではない。
そして、ねぎめしがまた減る。
ここでマッシュ焼き。
ようやく野菜。
胃が一瞬、労働環境の改善を期待する。
しかし、こいつにもスパイスがいる。
休憩ではなかった。
丸ごとのマッシュルームを焼き、内側に溜まった旨味ごと食べる。
噛めばじゅわっと水分が広がり、肉の合間にちゃんと軽さを入れてくる。
そしてハラミにんにく爆弾焼。
名前からして穏便に済ませる気がない。
ハラミに大量のねぎとにんにく。
網に乗せた瞬間、肉の香りと一緒ににんにくが立ち上がる。
もう翌日の予定は知らない。
今を生きる。
濃い肉の旨味に強烈な香味。
レモンを絞ると少しだけ整う。
少しだけである。
続いてデビルホルモン。
ついに悪魔まで出てきた。
赤いタレをまとったホルモンを網に置くと、脂が落ち、炎が上がり、煙とスパイスの香りが立つ。
テーブルの上だけ急に治安が悪い。
でも食べると、ホルモンの脂の甘みに辛味とスパイスが入り、むしろ後口は締まる。
名前は悪魔。
仕事はかなり丁寧である。
最後は和豚ベラ。
コリコリとした強い弾力があり、噛むほどに旨味が出る。
カルビともハラミとも違う、食感そのものを楽しむ部位だ。
焼肉の終盤にこういう知らない部位を出されると困る。
腹は満たされているのに、好奇心だけ初期化される。
ほるもん倶楽部 あじくら。
カレー。
バター。
スパイス。
爆弾にんにく。
デビル。
文字だけ並べれば、かなり危険な会議である。
でも、タンには弾力、カルビには脂の甘み、ハラミには肉の濃さ、ホルモンには脂と食感がちゃんと残っている。
肉を隠すために味を足しているんじゃない。
肉が強いから、ここまで遊べる。
普通の焼肉を食べに来た。
途中からスリランカが参戦した。
悪魔も来た。
爆弾まで落ちた。
それでも最後に残るのは、変わった店だったという印象ではない。
ちゃんと旨い焼肉を食べたという満足感。
ほるもん倶楽部 あじくら。
焼肉屋として、かなり真面目にふざけている。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#ほるもん倶楽部あじくら
#渋谷
#百名店
#あじくら
#スリランカ
-
スープパスタ過去1の絶品。下北沢シモキタ洋麺店2026年10月5日 14:57
スープパスタと聞くと、どこか味が優しく、普通のパスタより輪郭がぼやける料理を想像してしまう。
けれど、本当に旨いスープパスタは真逆だと思う。
麺が沈むほどソースを張りながら、最後の一口まで味を薄めない。
むしろ麺を食べ終えたあと、残ったソースまで追いかけたくなる。
そこまでやって初めて、スープである意味が生まれる。
下北沢のシモキタ洋麺店。
店頭で予約札を取り、指定された時間に再び戻る。
少し手間のかかる仕組みだが、店主がワンオペで一皿ずつ仕上げる店だと分かると、その時間さえ料理の一部に思えてくる。
まずはサラダ。
瑞々しいレタスに、粒感のあるドレッシングがたっぷり。
このあと待っている濃厚なパスタの前に、一度口の中を軽く整える。
一皿目は、にぼしバター 厚切りポテトとチョリソー。
運ばれてきた瞬間から、いわゆるパスタの枠に収まる気がない。
たっぷりのソースと麺の上には、厚切りのポテトが豪快に積み重なり、その間からチョリソーが覗く。
まず前に出てくるのは、バターの濃厚なコク。
そこへ煮干しの旨味が重なることで、単純な重たさにはならない。
ホクホクしたポテトはソースを吸うほど旨くなり、チョリソーの塩気と刺激が途中で味を締め直す。
パスタに厚切りポテト。
文字だけ見れば、かなり自由な組み合わせだ。
それでも煮干しとバターが両者をつなぐことで、妙に完成している。
考えるより先にフォークが進む。
次は、ミート ひき肉ときのこボロネーゼ。
一般的なボロネーゼを想像していると、まず皿を見た瞬間に裏切られる。
赤いソースが縁ぎりぎりまで張られ、その中には挽肉ときのこがたっぷり。
ソースを麺に絡ませるというより、麺と一緒にソースそのものをすくって食べていく感覚に近い。
挽肉の肉々しい旨味。
きのこの風味。
そこへトマトの酸味。
濃厚なのに、一口ごとに次のスプーンを呼ぶ。
ミートソースとも、一般的なスープパスタとも少し違う。
その境界線をあえて曖昧にしたところに、この店らしさがある。
そして、最も目を奪われたのが蟹と蟹味噌のオニオングラタントマトクリームソース。
皿から飛び出すような大きな蟹の爪。
その下には赤みを帯びたトマトクリームソースが広がり、中央にはこんがり焼けたチーズ。
蟹。
蟹味噌。
トマト。
クリーム。
チーズ。
濃厚な要素をここまで重ねれば、普通ならどこかが勝ちすぎてもおかしくない。
それでも一口食べると、まず蟹の風味が立ち、そこへ蟹味噌の深いコク、トマトの酸味、クリームのまろやかさ、焼けたチーズの香ばしさが順番に重なっていく。
フォークで麺を持ち上げるたびに、それぞれの要素が少しずつ混ざる。
だから最初の一口と、皿の終盤では印象が変わる。
ここが面白い。
シモキタ洋麺店の料理は、綺麗に巻かれたパスタを静かに味わうものではない。
皿の縁までソースを張り、
肉を入れ、
魚介を重ね、
チーズを焼き、
時にはポテトまで乗せる。
見た目のインパクトだけなら、もっと簡単に作れる。
でも、この店はそこでは終わらない。
たっぷりのソースに具材の旨味を重ね、それでも最後まで味の芯をぼやけさせない。
麺を食べるためにソースがあるというより、ソースまで食べ切らせるために麺がある。
そんな主従の逆転が、この店のスープパスタを面白くしている。
皿の縁ぎりぎりまで張られたソースは、単なるボリュームではない。
その表面張力の中に、最後の一口までフォークを止めさせない旨さが詰まっている。
下北沢まで来て、予約札を取って、時間になったらもう一度戻る。
そこまでしてでも食べたくなる理由は、皿いっぱいに溢れていた。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#シモキタ洋麺店
#下北沢
-
内装も接客もおしぼりも素晴らしい。中野に新しく出来た餃子のイペコ2026年10月4日 18:49
餃子屋に行って、最初に感心したのがおしぼりだった。
まだ餃子は一個も食べていない。
中野駅北口から徒歩1分。
2026年6月25日にオープンした餃子のイペコ。
店内を見渡すと、天井には餃子のシャンデリア。
餃子は普通、皿の上にいる。
ここでは天井にもいる。
入店して数分で、この店が普通の餃子屋ではないことだけは分かった。
そして最初に出てきたおしぼり。
一つ一つに手描きの絵とメッセージが添えられている。
これが真心こもってるし、普通に上手い。
使い捨てのおしぼりに、ここまで手をかける店も珍しい。
料理が出てくる前から少し嬉しくなる。
まだ餃子は一個も食べていない。
ようやく本業の焼き餃子。
ニラもニンニクも使わず、野菜を多めにした軽い作り。
餃子というとニンニクや脂の強さを求めたくなるが、これはその逆。
軽いから、一個食べると自然に次へ手が伸びる。
気付けば数が減っている。
続いて生姜餃子。
ベースの軽さは残しながら、生姜の香りがしっかり立つ。
さらにニラ餃子。
ここでニラとニンニクが解禁される。
公式では男餃子。
令和に入って、ついに餃子にも性別が付いた。
焼き餃子は軽く。
生姜餃子は香り。
ニラ餃子はしっかり。
見た目は似ているのに、食べればちゃんと違う。
3種類頼む意味がある。
誘惑のよだれ鶏。
まず名前から距離の詰め方が早い。
まだそんな関係ではない。
皿には鶏肉と旨辛だれ、その上には胡麻がたっぷり。
料理名はかなり自由だが、料理は真面目。
この辺りからイペコの性格が分かってくる。
定番の青菜炒め。
さっきまで誘惑してきたり、餃子を男にしたりしていたのに、急に定番。
ここだけ急に落ち着いた。
でも餃子や辛い料理が続いたところに、この青菜がちょうどいい。
派手ではないが、こういう一皿がちゃんと美味しい店は強い。
コリコリ旨辛コブクロ。
コリコリ。
旨辛。
コブクロ。
料理名だけで説明が終わっている。
これ以上こちらから付け加えることがない。
その名の通り食感がよく、辛さもあって酒が進む。
一口食べる。
飲む。
また食べる。
こういう料理は、なぜか気付くとなくなっている。
そして、ふわとろ天津飯。
ここで玉子と米。
色々食べてきたはずなのに、ふわっとした玉子に餡をかけて米まで出されたら普通に食べてしまう。
人間は思っている以上に天津飯に弱い。
写真でも中央にカニカマが堂々と乗っている。
脇役のはずなのに姿勢がいい。
もう半分くらい主役の顔をしている。
と思ったところで、本当の主役が来る。
主役のエビチリ。
自分から主役と名乗っている。
なかなか強気だ。
普通なら主役かどうかは客が決めるところだが、こいつは最初から話し合う気がない。
ただ、出てきた海老を見ると納得する。
丸ごとの大きな海老が皿の上でしっかり存在感を出していて、名前負けしていない。
これで小エビが数匹だったら店内に少し気まずい空気が流れていたと思う。
ちゃんと主役だった。
最後は、あさり紹興酒蒸しの辛。
殻付きのあさりがたっぷり。
あさりの旨味に紹興酒の香り、そこへ辛さが重なる。
天津飯を食べ、主役のエビチリまで登場した。
さすがにそろそろ終わりだと思っていた。
まだ飲ませる気でいる。
餃子のイペコは、餃子だけを食べに行く店ではなかった。
焼き餃子から生姜、ニラ。
よだれ鶏、青菜、コブクロ、天津飯、海老、あさり。
辛さも香りも食感も変えながら、酒場中華としてちゃんと楽しい。
それでいて、
餃子は天井からぶら下がり、
鶏は誘惑してきて、
餃子には性別があり、
エビは自分から主役を名乗る。
かなり自由だ。
でも料理までふざけているわけではない。
むしろ、ふざけるところと真面目にやるところがちゃんと分かれている。
そして最初のおしぼりにまで手を抜いていない。
たぶん、この店の良さはそこなんだと思う。
美味しい店はたくさんある。
でも食べ終わった後に、料理だけじゃなく店で起きたことまで覚えている店は意外と少ない。
餃子を食べに来て、
天井を見て、
おしぼりに感心して、
鶏に誘惑され、
男餃子を食べ、
自称主役のエビを迎え、
最後はあさりでまた酒を飲まされる。
なかなか忙しい。
ただ、普通に餃子を食べて帰るより、俺はこっちの方が好きだ。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#餃子のイペコ
#中野
-
新しくオープンした鮨。新宿鮨吟2026年10月4日 05:48
回らない寿司屋に入ると、人はなぜか自分まで回らなくなる。
背筋を伸ばす。
声量を落とす。
板前さんの手元を見る。
そして突然、育ちが良さそうな顔をする。
寿司を食べるだけなのに、こちらにも若干の演技力が必要だ。
そんな緊張感とは少し違うのが、新宿西口駅から徒歩3分の鮨吟。
2026年6月11日オープン。
本格鮨をもっと気軽に楽しませる町鮨だ。
まずはタコ刺身。
薄く引かれた身が皿いっぱいに並び、すだちと薬味を添える。
海の中では八本脚で好き放題やっていた生き物とは思えない上品さである。
続いて炭香る魚串。
寿司屋に来たはずなのに、ここで串が二本。
こちらが頭の中で組んでいた食事の進行表は、開始早々に白紙になった。
そこへ貝汁。
タコ、炭火、貝。
まだ寿司を一貫も食べていないのに、海だけはかなり満喫している。
そして特上盛り合わせ七貫。
真鯛、赤身、イカ、中トロ、カニ、穴子、甘エビ。
ここで俺は、なぜか七貫すべてを手のひらに乗せて撮り始める。
鮨吟は何も悪くない。
一貫目の真鯛。
端正な握りが手のひらに乗った瞬間、急に寿司の写真なのか手相占いなのか分からなくなった。
続く赤身。
生命線の上にマグロがいる。
こんな未来は占い師も想定していない。
イカを経て中トロ。
今度は手相の線より、マグロの脂の筋の方が気になってくる。
そしてカニ。
ほぐした身がシャリの上にこんもり。
主役が前へ出すぎて、シャリは完全に付き人である。
穴子はさらに堂々。
大きな身がシャリを覆い、もはや握りというより布団。
シャリが寝ている。
最後は甘エビ。
七貫目になる頃には違和感も消え、俺の手のひらが寿司下駄として普通に勤務していた。
鮨吟の面白さは、鮨だけを堅苦しく食べさせないところ。
刺身をつまみ、炭火の魚串を挟み、貝汁を飲み、最後は職人の握る鮨へ。
本格的なのに構えなくていい。
ただし今回、一番構えなくなっていたのは店ではない。
俺だった。
最初は背筋まで伸ばしていたのに、最後には寿司を手に乗せている。
鮨屋で一番カジュアルになったのは客だった。
#DOLCE1
#歌舞伎町ホスト
#愛川美輝
#鮨吟
#新宿
#寿司